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2013/05/06

フランシス・ベーコン展(東京国立近代美術館)

Bacon01

先日、東京国立近代美術館でやっていた「フランシス・ベーコン展」へ。
日本で個展が行われるのは実に30年振り。

作品は、3部にわけて展示されている。
第1部は「移りゆく身体 1940s-1950s」
この時期描かれた作品の身体が「移行状態」にみえるからこのタイトルになったらしい。

初期のベーコンの作品は、どこかこの世のものではないものを感じさせる。
ぽっかりと穴のように開いた黒々とした口は身体のどのパーツよりも強い存在感を放ち観る者を吸い込んでしまいそうだし
半透明で闇に溶け込んでしまいそうな身体は亡霊のようでもある。
椅子に座り檻に囲まれた人物は、地縛霊のように永遠にそこから逃れられない。どこにも行けない。
開いた口からは漆黒に轟く悲鳴が発せられ、ただただ闇に深く沈んで飲み込まれていく恐ろしさの余韻が残る。
はじめに人物の口の中へ吸い込まれようと、人物と一緒に闇へ引きずり込まれようと、結局は行き着く場所は同じところ、人の身体の内側にある人の暗部なのかもしれないという外側と内側がぐるぐるぐるぐると永遠に入れ替わるようなくらくらと目眩がしそうな、檻の中へと入ったら最後なかなか出られなくなるような絵の魔力。
展示のはじめっからがつんとその濃さにやられっぱなし。

この第1部の中で、ゴッホの絵をもとに描かれた2作品だけは他の作品とは色彩の激しさも筆の強さも異なる。
人物の輪郭はくっきりと描かれ、そして赤やオレンジや緑や水色といった明瞭な色が厚く塗られている。
南仏などの明るい陽射しの影響もあると言われているらしいけれど、平和であたたかい感じになりそうでやはりどこか根っこに暗さが残る作品のような気もする。

好み的には、はじめの亡霊的な絵のシリーズの方がよかった。
残り2部と比較しても、この時期が一番好き。

第2部は「捧げられた身体 1960s」
一番印象的だったのは、チケットや図録の表紙にもつかわれている、当時の恋人ダイアを描いた作品。
警察の記録のように3方面から描かれた頭部は、ぐしゃりと歪んでいる。
その3つの顔の中には、弾痕とも受け取れる黒く丸い穴。
恋人の顔を破壊した形で描こうとするのは、愛情が強過ぎる故、なのだろうか…。
銃弾を打ち込んでもなおも絡み付くようなねっとりとしたものを感じる絵。

第3部は「物語らない身体 1970s-1992」
三幅対の作品が中心なのだけれど、一番印象に残ったのは鍵穴を回す人を描いた作品だった。
頭の部分は黒く暈され、半透明の身体で必死に扉を開けようとしている。
死を表現した作品ということなのだけれど、単純にこの世からあの世へというようなものではなく、もがき苦しんで逃げようとしているように見える。
死は死でも、大往生ではなく焦燥感によって追いたてられた自殺のように感じる。
向こうに行ってしまったら、本当に二度と戻れないのに、それでも必死で鍵穴を回そうとする姿が怖い作品。

あとは、ベーコンに影響を受けてつくられたペーター・ヴェルツとウィリアム・フォーサイスのインスタレーション作品と、土方巽の舞踏公演「疱瘡譚」の記録映像の展示があった。

ベーコンの作品に影響を受けたアーティストが多いっていうのはよくわかる。
ものすごい引力と魔力がある。
連れが「ルドンとかマン・レイもいいし好きだけれど、迫力ではベーコンが一番」というようなことを言っていて。
たしかにオディロン・ルドンとかマン・レイは二人とも大好きな作家だし以前一緒に観ているのだけれど、何て言うか「生の作品」の迫力とか衝撃度はそんなに大きくなかった。
それこそ、家で作品集をこぢんまり観るという楽しみ方でもよいような気がするし、そういうのが似合う繊細な作品だ。
でもベーコンは、「生だからこそ」の作品から感じるエネルギーが凄まじい。
うっかり気を抜いて観ていたらやられてしまいそうな気がする。

だから、今回の展示のタイトル
目撃せよ。体感せよ。記憶せよ。

が、まさにドンピシャ。
これは体感しなきゃだめだわ。

ベーコンの作品展示への拘り、必ず硝子をつけて額装するというのもよかった。
硝子があることによって、作品と鑑賞者との間に距離を生むことが狙いなのだそう。
手が絶対的に届かない、あちら側にある作品。
ベーコンの作品にぴったりな展示方法。

Bacon02

図録は生の迫力には及ばないけれど、やっぱり見返したいので購入。
ほんと行ってよかった…。
もらった刺激の量がすごい。

そしてこの後ポスターハリスギャラリーを梯子して寺山修司と天井棧敷全ポスター展も観たのだけれど、その記事はまた次回。

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