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2011/07/31

高嶺格「とおくてよくみえない」(横浜美術館)

Takamine_3 かなり前だけれど、高嶺格さんの「とおくてよくみえない」展へ行った。
今年の3月、震災直後の20日までの展示。
行こうかどうしようか迷ったものの、電車もダイヤは変わりつつも動いていた頃であったし、震災があったからとアートを観にいくことを自粛するのが正しいような気もしなかったので結局行くことにした。
私の気持ち自体もどうしようもなく落ちて苦しくてたまらなかった時期であったから、何かをいれたかったのだよな。
そうでないと真っ黒いものに埋もれて窒息してしまいそうだった。
とても不安定な運行の電車やいつ揺れるかわからない街であっても、家で一人でじっとしているよりもずっとましだった。

高嶺さんを知ったのは、森美術館で行われた六本木クロッシング2010展。
「ベイビー・インサドン」という、自身と在日韓国朝鮮人女性との結婚の宴の様子などを写真と文字とでおっていく作品。
写真が横一列にだーっと並んでいるという展示方法が斬新なだけではなく、在日韓国朝鮮人と日本人における問題などについて当事者の視点で書かれていてとても興味深かった。

あとは同じく六本木クロッシング2010展で上映されたダムタイプの「S/N」
彼がこのダムタイプの一員であったことは、「とおくてよくみえない」展について調べた時に初めて知ったのだけれども、この「S/N」のインパクトたるやもの凄くて、六本木クロッシングで観た他の展示の内容はぶっ飛ぶわ、あまりの衝撃に帰りずっと身体が斜めになっているわで、それまでダムタイプを知らなかったことを猛烈に後悔した。

今ここでダムタイプについて書こうとしたけれど、それはまた別にする。
長くなりすぎてしまう。

今回の展示で一番印象深かったのは『A Big Blow-job』
真っ暗な室内で、観客は高いところから地面を俯瞰している。
すると、ひかりがすーっと動いて帯を描き、地面に描かれている文字が読めるというもの。
よく見えないから、目を凝らして光を追う。
読んでいるそばから文字は闇に埋没する。
よく見えなさが逆に読みたいと思わせるのが面白い。
タイトルは日本語だと展示NGになってしまうような内容だけれど、単に話題性やインパクト重視でつけているのではなく、世界を受容する、世界を飲み込む意志のようなものが表現されているのだそう。

普段、この、暗闇で文字を追うという行為をふっと思い出す時がある。
自分の内側に沸き上がってまだ意味をきちんと成していない言葉の断片をなぞる時。
ぷくぷくと上がってきた泡のような霧のようなものに形を与える時。
同じだなって思う。

光のあたった言葉を目で追って、そうしてそれを繰り返しているうちにその地面の形も知ることになる。

この日は、急遽サイン会が催されることになっていたので購入した本にサインをいただいてきた。

展示の図録も兼ねているこの本、高嶺さんのアートへの考え方やダムタイプ含め今まで辿ってきた道などについても描かれていて、この「とおくてよくみえない」展を観ていない人でもアート好きならすごく興味深い内容じゃないかと思う。
おすすめ。

高嶺格 とおくてよくみえない

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