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2011/03/27

家族生活 / やまだないと

家族生活

家族生活
やまだないと

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文藝別冊のやまだないと特集に掲載されている作品なので持ってはいたのだけれど、ないとさんの作品の中でも特に好きなので単行本も買ってしまった。

ゲイのカップルである父親二人に育てられた12歳の少女ヒナの話。

どこにも定住せずに旅を続ける3人。
ヒナのルーツに関する謎や衝撃的な事件を経て、やがて3人はスペインのサグラダ・ファミリアへと行き着く。
聖家族贖罪教会。
3人にとってとても皮肉な名前のその場所に、ヒナは惹き付けられる。

スペインで出会った女性建築家の言葉に、ヒナはいつしか自分たち家族の形を重ねる。

しばりつけるの・・・
どこにも行けないように

・・・

この話は未完である。
だから巻末には、4人の監督による4つの結末が収録されている。

でも私は、この話は未完でありながらも完成されていると思う。
結局どうなってしまったのか。
その最期を見せきらないことこそが、未だ完成しないサグラダ・ファミリアの姿に重なるからだ。

完成されていないものにはその枠組みがなく、その中身はどこまでも広がっていける可能性を秘めていて、それは時には完成されているものよりもずっと美しい姿へと変貌を遂げることができる。

・・・

ヒナが父親と一緒に祖父のもとを訪ねる場面がある。
不仲であるように見える父親と祖父。
けれど、湖に落ちて死にかけたヒナを助けた祖父は、ヒナにこう言う。

「おまえが死んだら あいつが悲しむ」

私はこの場面がすごく好きだ。

そして。
自分が落ち込んでいる時にはこのセリフがこだまする。

おまえが死んだら あいつが悲しむ

私は自分で自分を殺したりはしないけれど。
でも自分が生きているということは、等しく誰かを悲しませずにすんでいるということなのだという事実の輪郭をそこに見てはっとする。

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