森に眠る魚 / 角田 光代
「森に眠る魚」
角田 光代
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文教地区に暮らす5人の子持ちの主婦たちの話。
読んでいる途中で気付いた。
この作品は、1999年11月に東京都文京区で起きた「文京区幼女殺人事件」をたたきにしていることを。
私は主婦でもないし、子持ちでもない。
でも女同士の繋がりにおけるこの種の諍いや葛藤は様々な場で見てきた。自分の身に起きたことだけでなく、周囲に起きたことなども含めて。
角田さんの描写はいちいち本当にリアルだ。
5人それぞれ全くタイプが違うし、特別悪人がいるわけでもなく、いるいるこういう人、という感じで丁寧に描かれている。
被害妄想。
嫉妬。
ストーカー。
悪意。
憎悪。
殺意。
はじめは親しく付き合っていたはずの5人が、それぞれの綻びから関係を破綻させていく。
そのリアルさと重さで読み止めることができず、一日で読み切ってしまった。
子持ちの主婦に限らず、人間関係においてこういうことってあるんじゃないだろうか。
人づてに聞いたことで相手のことを悪く解釈したり、悪く思われているんじゃないかという被害妄想に悩んだり、色々。
この作品は5人の登場人物それぞれの視点でストーリーが進行していくのだけれど、終盤、誰の視点が分からないかたちで描かれている話がある。
それは「文京区幼女殺人事件」の犯人の独白のようであり、この作品中の誰かのことであるような、不思議な仕立てである。
どんなに辛くても憎くてもさ。
幼い命を手にかけてはいけないよ。
周囲の価値感に引きずられて手に入れたミーハーな何か、それってそんなに大切ですか?
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コメント
私の職場のおばさん達、常に面倒臭いです。
(TT)
投稿: ピョン | 2011/01/19 14:26
や、でもきっと悪意はないですよね。
仲良くしてあげて下さい(笑
投稿: *yuka* | 2011/01/19 23:09