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2010年6月

2010/06/25

反射するもの

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※名古屋の公園で会った猫

瞳の中を泳いでいるものは何だろう。
今でも欠片は残っているだろうか。

他者の数だけ存在する世界の多さに時折目眩を覚えながら。
全てがバラバラのようで。
全てが繋がっていて。

無数の欠片が散らばるこの世界は。
いつでもどこかに色と光とが溢れていて
思いと喧騒がねじ切れそうに渦を巻く。
裏側に抜け殻のようにしんとした穴を存在させながら。

たまに、そこに、こつりと、躓く。

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2010/06/24

春琴抄 / 谷崎 潤一郎

春琴抄

春琴抄
谷崎 潤一郎

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美しく高雅な盲目の三味線奏者春琴と、彼女に献身的に仕える佐助の話。

句読点や改行が極力減らされた独特の文体によって紡がれるこの物語は、全編に渡って美しい響きが漂っている。
文章は、音とリズム、と。私はいつも思っているのだけれど。
本当にこの作品の文章は心地が良いのだ。

以下内容にふれます。

目の見えぬ春琴にとっての道楽は、小鳥。
弟子たちには怒罵も打擲も容赦ない苛辣な春琴だったけれど、天鼓という鶯の声にはうっとりと静かに聞き惚れていて、そのギャップが素敵。

そんな春琴は、ある時何者かによって顔に大火傷を負わされ、美しい顔を失ってしまう。
気高い春琴の、醜く変わってしまった顔を見られたくないという思いを汲んだ佐助は、なんと自ら針で目を尽き、盲目になってしまう。
もう、この場面の為にこの物語は存在していたんじゃないかというくらい鳥肌のたつような描写だった。
自分の愛する人の美しい時の姿だけを永遠に脳裏に刻んで生き続ける為の迷いのない自傷行為。
究極の献身であり、一種のマゾヒズム。
この場面の存在が、「究極の耽美小説」と言われる所以なのだろう。

美しい琴の音、鶯や雲雀の冴え渡った啼き声。
それらの音に静かに包まれたこの物語は、最終的には完全に視覚を排除した世界へと行き着き、そこに至るまでの流れが兎に角見事である。
緩やかなせせらぎがあり、一時激しく氾濫し、またもとの流れになり、やがて細くなっていったその流れは大地に吸い込まれて消えてしまう、というような。

その、視覚を失った世界で佐助が悟ったこと。
それが以前ダイアログ・イン・ザ・ダークへ行った時に考えたこととオーバーラップした。

私たちは視覚に頼るあまりに、ぽろぽろと零してしまっているものがあるはずで。
相手のことを理解して、そうして本当に心の底から愛している瞬間には。逆に視覚は手放している感覚、手放すべき感覚、であるような気がする。

春琴抄の詳細はこちら

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2010/06/22

紫陽花の六月

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※実家の庭の紫陽花

先日、実家に行った折に、亡くなった祖母が所有していた画集を数冊もらってきた。

祖母は若い頃は美術の先生をしていた人で。
実家の一番日当りの良い大きな窓のついた部屋は祖母のアトリエで、彼女はそこでパステル画を描いていた。
モネやセザンヌ的なやさしい色合いのものたち。

私が好きな絵と祖母が好きな絵のカラーは一寸違うのだけれど。
でも、私が絵を観るのも描くのも好きなことのルーツに、祖母があるような気がする。
私が幼い頃に遠くの病院に入院してしまったから、絵について話したことはなかったのだけれども。

分厚い画集たち。
雨音を耳に落としながら静かに捲りたい感じ。

紫陽花の花言葉は。
日本だと花の色が変わることが由来の「移り気」が有名だけれど
フランスだと長く咲くことから「忍耐強い愛情」だそう。
雨の中の楚々とした花々に秘められた熱い思いを感じたような気がした。

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2010/06/17

映画「犬と猫と人間と」自主上映会

犬と猫と人間と自主上映会2010年7月24日

日本で年間にどれだけの犬猫が処分されているか知っていますか?
その数は、なんと年間30万頭以上。
実に一日に1000匹近くのペース。

この「犬と猫と人間と」は、一人の猫好きなおばあさんの思いから生まれた不幸な犬猫を減らす為のドキュメンタリー映画。
犬猫の悲しい現実を見つめていて、完成までに4年の歳月がかかっています。

この度、東京で自主上映会が行われます。
是非足をお運び下さい。

■上映日時
2010年7月24日(土) 13:30〜 (約2時間)

■上映場所
ちよだプラットフォームスクウェア ミーティングルーム002

■交通
竹橋駅(東西線) 3b KKRホテル東京玄関前出口より徒歩2分

■会費
1500円(※上映に掛かる経費以外は全て犬猫のために寄付されます)
事前にメールでの予約が必要です。
下記上映会ブログのページよりご確認下さい。

↓「犬と猫と人間と」自主上映会(詳細・予約)はこちら↓

犬と猫と人間と上映会ブログ

主催:INN同好会

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この映画のことは、旅先で訪れた猫好きの古本屋の店主から聞いて知りました。
彼らも犬猫の為にと映画の普及に尽力されています。

犬猫の為に私に何ができるだろう?と考えた時に、この映画の普及に少しでも関わることではないかと考えました。
東京の映画館での上映は終わってしまっているのですが、自主上映会があることを知り、主催の方にブログでの告知について確認したところ、 快く了承して下さりました。

自主上映会に足をお運びいただけたら、また、周囲の方に広めていただけたら嬉しいです。

これをきっかけに、一匹でも多くの犬猫が、救われますように。

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「犬と猫と人間と」映画公式サイト

犬と猫と人間と

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「犬と猫と人間と」予告編

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2010/06/14

世界を変えるデザイン展 02(アクシスギャラリー)

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DESIGN HUBに続いて、もうひとつの会場アクシスギャラリーへ。
両会場は徒歩で10分程の距離。

こちらの会場では、発展途上国市場への取り組みを積極的に推進している企業などの視点から各種プロダクトデザインを紹介。

以下、気になった展示物について。

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Plakkies

デルフト工科大学によるプロジェクト。
廃タイヤから生まれたサンダル。
派手な柄は工場周辺のスラム孤児たちによるもので、楽しんで描いているのだろうなと想像するとほほえましい。
南アフリカのゴミ問題と貧困の解決に役立っている。

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こんなタイヤがサンダルになっちゃうのね。

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Ragbags

インドのレジ袋のポイ捨て問題から生まれたバッグ。
インドは、レジ袋使用禁止例が出た程、ポイ捨てが深刻な問題だったのだとか。
結構しっかりとしたつくり。

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インドのレジ袋、カラフルだなぁ。
廃材利用のバッグというと、FREITAGを思い出す。

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Antivirus

使用済み注射針再利用防止の為の収容容器。
空き缶に蓋を取り付けるだけで使える。
こういう容器を提供しないと、使用済み注射器を拾って売ってお金にしようとしてしまう人がいるのだとか。

使用国:ベトナム

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この空き缶を積み上げた展示、なかなか迫力があった。

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PeePoo

排泄物を肥料に変える携帯トイレ。
高品質なバイオプラスチックで出来ていて、匂いも漏れない。

衛生設備が整っていない地域では、排泄物によって汚染された水により伝染病が蔓延したりといったことが深刻な問題になっている。
ナイロビのキベラ地区では、ビニール袋にいれた排泄物を窓から放り投げる「フライングトイレット」なんてものが存在しているらしい。
窓からって・・・道が大変なことに・・・。

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そんなトイレ不足の地域の問題を解決するプロダクト。
文字が読めなくてもわかる、使用方法の紙がセット。

*

こういう展示を観ていると。
わかりやすさであったり、現地での量産のしやすさであったり。
様々な工夫がされていることがわかる。
今までスポットがあたってこなかった、90%の人へ向けたデザイン。
そこをクローズアップすることの重要さがひしひしと伝わってきた。
「デザイン」の存在基準について考えたくなる。

この展示は13日で終わってしまったのだけれど、展示の本が出ているのでそちらおすすめ。

世界を変えるデザイン

世界を変えるデザイン——ものづくりには夢がある

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世界を変えるデザイン展 01(東京ミッドタウン DESIGN HUB)

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2010/06/13

世界を変えるデザイン展 01(東京ミッドタウン DESIGN HUB)

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世界を変えるデザイン展」に行って来た。

先進国におけるデザインは世界総人口のほんの10%を相手にしているに過ぎず、その他90%の発展途上国に向けたプロダクトデザインの重要さを訴える企画。

二会場同時開催なので、記事は会場ごとにわけてみた。
まずは東京ミッドタウン内、DESIGN HUBの方から。
この会場では約50点が展示されている。

はじめに、日本を基準にして、世界各国の食料や水、電気、病院等、それぞれの生活状況がグラフ化されている。
日本の水準がいかに少数派で、そして恵まれているのかということに気付かされる。
そして、アメリカがいかに飽食で肥満大国なのかということも・・・。

以下、特に気になったプロダクトについて概要とコメントを。

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Q Drum

転がすことで、最大50リットルの水を運搬することができるタンク。
女性や子供たちの負担を軽減する。

値段:50ドル

使用国:ケニア、エチオピア、ルワンダ、ナイジェリア、アフリカなど10カ国

水を運ぶのに未だに人力である、ということ。
そしていっぺんにたった50リットルしか運べないのに重宝されている、ということ。

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Life Straw

ストロー型の携帯用浄水器。
内部のフィルタで濾過することで、バクテリアやウィルスを除去。
1本で約700リットルの泥水を飲料水へ変えることができる。

値段:2〜5ドル

使用国:インドネシア、ガーナ、ウガンダなど

水道の蛇口を捻ればいつでもどこでも清潔な水が出てきて。
お茶やジュースが飲みたければそこここに自動販売機があるのが日本。
でも、これを使用している国では、安全な水がないことで病の危険に苛まれている、ということ。

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SODIS

太陽光と紫外線による消毒作用を利用した浄水・殺菌法。
日光に6時間さらすことで水中のウィルスやバクテリアを殺菌する。

安全な水を手に入れる為に、ペットボトルにいれて6時間も待たなければいけない、ということ。

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出産介助キット

出産の際に病院に行くことが出来ない地域の人の為の出産キット。
石鹸、紐、カミソリ、ビニールシート、プラスチックの板、金だらい など。

使用国:ネパール、タンザニア

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こんな風に、出産手順をわかりやすく図解した用紙もセット。

日本では産婦人科のどこそこの食事が豪華だの、先生がどうだのと妊婦さんに病院を選ぶ権利があるけれど、これらの国ではそもそも病院が近くにない、ということ。

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Moon Light

ストラップ付き太陽光充電式照明器具

値段:20ドル

使用国:カンボジア

机がないので首から下げられるようにストラップがついている、ということ。
日本だと照明器具を設置する場所がないなんてこと、ない。

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Jaipur Foot

ゴム製の義足。
アメリカ製だと8000ドルするが、これは原価30ドル。
遠くの病院へ行くお金がない人たちの為に提供された技術で、無償で配っているNPOがある。
また、現地で誰もが安価につくれるようにと特許はとられていない。

使用国:アフガニスタン、イラクなど22カ国。

この義足によって救われた人は一体何人いるのだろう。
現地の状況に即した素晴らしい技術。

*

発展途上国の人々の視点。
何が必要なのか。
何が便利なのか。
そういうことが認識できる非常に面白い展示だった。

展示を観ていくと、日本では必要のないプロダクトばかりであることに気付く。
また、識字率であったり教育そのものであったり。
私たち日本人にとって当たり前であることが、些とも当たり前ではない、ということとか。

日本では、安全な水は公園とかにいけば無料で飲むことが出来るけれど、そもそも安全な水が簡単には手に入らない国がいかに多いことか。
病気の不安がいかに多いことか。
明日健康でいられるかもわからない。
明日お腹がいっぱいになるかもわからない。
そんな環境の国がいかに沢山あるか。

とりあえず。
食物の大量廃棄とか国をあげてやめようよ。日本。

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2010/06/12

粒子、跳ねる

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少し眠って目を覚ましたら。
憑き物がごろりと落ちたかのように身体が軽くなっていた。
密度の濃い夜の闇に拡散してしまいそうなくらいに。

きゅーっと突き詰めては
やがて飽いて飛び石の上を跳ねて。
どんどんどんどん前へ進む。
先程蹴った飛び石はどれだっけ。
ふと振り返るとわからないのだけれど
でも私の爪先はその感触をきっとどこかに覚えている。

立ち止まって。
踵を鳴らして。
また眠りに落ちる。

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2010/06/08

澱む雲

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気になることがあると、ぎゅーっと突き詰めようとするふしがある。
それが却って自分の首を絞めることもある。
でも。
浸かったお湯の温度がじわじわと体温に近付いていくように。
ゆるくぬるく曖昧にその境界線を暈していくというやり方は
多分私らしくないのだ。

経る出来事の数だけ人は賢く、その一方で臆病になっていく。
この雲がでたらもうすぐ雨粒が落ちてくるとか。
そんなことがわかるくらいに。
そうして、やがて濡れない場所で縮こまるようになる。

沢山の雨に降られることも。
それはそれで恵まれているのかもしれないのに。
ただただ乾いている場所にいる人よりも、ずっと。

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