« 謹賀新年 | トップページ | エレファントカシマシ 新春ライブ(渋谷C.C. レモンホール) »

2010/01/05

逃亡くそたわけ/ 絲山 秋子

逃亡くそたわけ

逃亡くそたわけ
絲山 秋子

---

「亜麻布二十エレは上衣一着に値する」

調子の悪い時、そんな幻聴が響く躁病患者の花ちゃんは、精神病院からの脱走を決意して同じ病院の患者、鬱病のなごやんを誘う。
二人はなごやんの愛車おんぼろのルーチェで逃亡することになるが・・・という話。

精神病院からの男女の逃亡、というと、岩井俊二の「PiCNiC」を思い浮かべたけれど、そんな詩的で美しく果敢ない話ではなく、もっと現実的でありつつ二人のやりとりで一寸笑える話。

そもそも、精神病院からの逃亡といっても、追っ手が迫り来るわけでもないので緊迫感は全くない。なので、いわゆる「スリル満点の逃亡劇」を期待するような作品ではない。

博多弁でばんばん言いたい事を言う花ちゃんと、名古屋出身なのに東京に憧れるあまり頑に標準語しか話さない、理屈っぽくて小心者のなごやん。二人のやりとりが面白いのと、九州を南下してぐんぐん進む旅っぽさとで、あっという間に読めてしまった。
九州の名所や食べ物も色々登場するので、旅気分で読んでみるのいいと思う。花ちゃんが好きな「いきなり団子」は、物産展かなにかで買って食べたけれど、たしかにあれは美味しい。

花ちゃんの幻聴は、マルクスの「資本論」にでてくる言葉らしい。
要するに、「二十エレの生地=一着の上着」ということ。
何故幻聴で繰り返し囁かれるのがその言葉なのか理由は明かされないし、そもそも花ちゃん自身にも馴染みのない言葉であるらしい。
けれど、逃亡中に花ちゃんがお金や清潔な衣類や寝床だけが必要だったことや、最後に高級ホテルに泊まった時の様子、なごやんがぱーっと買い物をしたことや花ちゃんの気が進まなかった理由なんかと結びつけて考えていってみると、色々発展していって面白い。

結局人は等しく「死」に向かって進んでいるんだけれど、でも様々な欲求を満たしていく「生」も同時に持っているのだよね。
だとしたら、「逃」ではなくて「進」という気持ちでいたいものだ、と思った。

逃亡くそたわけの詳細はこちら

|

« 謹賀新年 | トップページ | エレファントカシマシ 新春ライブ(渋谷C.C. レモンホール) »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

きのう*yuka*の、気分みたいな脱走するつもりだった?
だけど、欲求したかもー。

投稿: BlogPetのmintdrop | 2010/01/05 14:55

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158210/32860242

この記事へのトラックバック一覧です: 逃亡くそたわけ/ 絲山 秋子:

» 絲山秋子の「逃亡くそたわけ」を読んだ! [とんとん・にっき]
著者の絲山秋子は、1966年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。「イッツ・オンリー・トーク」で文学界新人賞、「袋小路の男」で川端康成文学賞、「沖で待つ」で第134回芥川賞を受賞。と経歴にあります。この作品「逃亡くそたわけ」は、2005年2月25日初版発行とあ... [続きを読む]

受信: 2010/01/05 01:39

« 謹賀新年 | トップページ | エレファントカシマシ 新春ライブ(渋谷C.C. レモンホール) »