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2009年10月

2009/10/31

お縫い子テルミー / 栗田 有起

お縫い子テルミー

お縫い子テルミー
栗田 有起

第129回芥川賞候補作

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一針入魂、流しの仕立て屋お縫い子テルミーの話。

島でずっと仕立て屋として一家三人で働いていたテルミーは、ある日歌舞伎町を目指して一人上京する。アルバイトをはじめた水商売のお店で、シナイちゃんという女装をして歌う男性に出会う。素晴らしい歌と彼の存在感に、テルミーはたちまち恋におちてしまう。
テルミーはシナイちゃんの家に居候することになり、自分には決して振り向いてくれないシナイちゃんへの思いを燻らせながらシナイちゃんの為のドレスを縫うことになる。

栗田さんの作品は、「オテルモル」もそうだったけれど、登場人物が飄々としている。
感情を込めずに呟いた色々の中に、涼しい顔をした真実が鎮座している、という感じ。
だから、さらさらっと読めるわりに、ああいいこと言っているなという箇所がたくさんある。
ただそのあっさりがいい点もあれば物足りなさに繋がる部分もあって、例えばテルミーがシナイちゃんをすごく好きでそのことを悩んでいても、その辛さがこちらに伝わらないので、そんなに悩む程好きだっけ?という風に感じられてしまうところは残念。
そして、シナイちゃんの家にいた時までは話が面白かったのに、その家を出たあたりから少し退屈になってしまった。

でも、架空の職業「流しの仕立て屋」という設定がとても面白く、裁縫や布たちと一時とても近しい距離にいられる不思議な話。テルミーも魅力的で、この栗田さんらしい人物の描き方が私はとても好き。

併録の「ABARE・DAICO」は小学生の男の子を主人公にした話。
瀬尾まいこさんの「卵の緒」と印象が似ている。
どちらも男の子目線の純粋でかわいい話なのだけれど、どちらかといえば私は「卵の緒」のほうが好き。

お縫い子テルミー詳細はこちら

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2009/10/25

モダンフレンチ『フォーティーファイブ』でランチ (ザ・リッツ・カールトン東京 45階)

先日、ザ・リッツ・カールトン東京の45階にあるモダンフレンチ『フォーティーファイブ』 のランチへ。誘ってくれた友人は以前ここのアフタヌーン デザート ブッフェへ行った事があるらしく、かなりデザートのレベルが高いとのこと。今回はランチのコースにしたのだけれど、ランチにもデザート ブッフェがつくのでお得。

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前菜は「オーガニックサラダ‘45’、バルサミコドレッシング」
単なる彩りがいいだけのサラダではなく、野菜が瑞々しく美味しい。

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本日のスープは野菜とベーコンのスープ。
これはごくごく普通のシンプルなスープという感じ。
薄味なのがいい。

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メインは「ポルチーニと季節の茸のリゾット、鶏胸肉のロースト、トリュフの香り」
こっくりとした濃厚なソースのリゾット、美味しい。
これもまた味付けが濃くないところがいい。

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デザートビュッフェは、ケーキ、シュークリーム、マカロン、ダックワーズ、チョコレート、グラスデザート、フルーツ、マフィン、焼きたてペストリー、和菓子などなどのたくさんの種類の中から好きなだけ食べることができる。
デザートビュッフェというと、たとえホテルのものでも甘過ぎたりなかなかクオリティが高いものは少ない。特に私は甘過ぎるものが苦手なので、お店によっては結局サンドイッチばかり食べるなんてことになったりする。
でもここのデザートは本当に美味しいし、盛りつけも美しい。
特におすすめはグラスデザートで、写真のパッションフルーツソースのムースの他4〜5種類くらいあって、どれもさっぱりとしていてフルーツたっぷりで美味しかった。
甘党の方には、チョコレートもおすすめ。
ホテルで普通に販売している高級チョコレートが食べ放題なのだもの。
あとは、ビュッフェでマカロンがあるというのにも感動。マカロン大好き。

あとランチは数種類のパンの中から好きなものを選べる。
ビュッフェがあるけれど美味しかったのでついつい2ついただいた。
これで4900円なのだから、とてもお得なランチ。

45_05

この日は曇り空だったけれど、東京タワーが見えて眺めがいい。
とてもリッチな気分のランチだった。

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2009/10/19

nest festival'09 (shibuya O-East&DUO MUSIC EXCHANGE)

Img_4282

昨年の「nest festival'08」に引き続き、今年も行ってきた「nest festival'09
今年は「shibuya O-East」と「DUO MUSIC EXCHANGE」の2会場での開催。

はじめの方の人たちは特に興味なかったので、14時過ぎくらいにO-Eastに到着。
以下、感想。

+

mooolsmyspace) O-East

人がみんなDUOに流れてしまったのか、わりとがらがらだったO-East。
もさもさ頭のボーカルの人と、スキンヘッドのドラム&ギター3人のバンド。
系統で行ったら、FISHMANSっぽいかんじ。
ボーカルの人があまりうまくないなという印象だったのだけど、今myspaceで聴いたらちゃんとしている曲もあった。
どこかで聴いたようなありがちなような感じがしてしまってあまり印象に残らず、途中で飽きてしまった。演奏とかは悪くなかったんだけど・・・。単純に好みじゃなかったのだと思う。
あ、でも、FISHMANSは好きです。

+

neco眠るmyspace) DUO

先ほどのO-Eastとは打って変わって、人がぎっしりのDUO。
若者たちが結構熱狂。
磯野家のタマがフルーツから出てきた後、ファンキーに踊ったらこんな感じかなぁ、という雰囲気の愉快でどこか恍けた曲調のバンド。
バンド名に「neco」とはいるだけあって、なんだか曲がほんとに猫(タマ)っぽいの。
踊るのに向いている感じで、賑やかさが楽しい。
ただ、正面にいた人のTHEアディダスな服装はネタなのか何なのか気になった・・・。
途中で二階堂和美さんがゲスト出演。
元気、元気の二階堂さんが眩しかった。

+

グッドラックヘイワ O-East

キーボード担当野村卓史さんと、ドラム&口笛担当伊藤大地さんによるインストゥメンタル・デュオ。
事前にネットで聴いていて何だかよさそうだなぁと思い、WEG以外で唯一目当てにしていたのだけれど、すごくよかった。
キーボードもドラムも洗練されていてすごくうまい。
ドラムソロの時の伊藤さんの力強さと素早さがすごかったし、野村さんの鮮やかなキーボードには見とれた。あれだけキーボード弾ける男性ってかっこいいわ〜という迫力。
ただきれいなだけじゃなくて電子音を絡めたものもあったり、というのもツボ。
ドラムの伊藤さんが野村さんの様子をちらちら見る感じとか息があっていて仲が良い空気もよくて、この二人素敵だった。

THUNDER
「THUNDER」 グッドラックヘイワ

Patchwork
「Patchwork」 グッドラックヘイワ

+

OGRE YOU ASSHOLE myspace) O-East

爽やかでかわいくて無難。
結構ノリノリで聴いている人がいた。

+

・JOE LALLY (myspace) DUO

いまいち入り込めない感じだった。
曲の終わり方も、「あれ、今ので終わり?」みたいな感じで・・・。

+

world's end girlfriend & BLACK HOLE (myspace) DUO

今回のお目当て、WEG。
前田勝彦さんはプロフィールとかも伏せているのでどんな方か全然わからなかったのだけれど、すらっとして影のある、あの音楽の世界観にマッチする方だった。
前田さんプラスベース、2ドラム、サックス。
そしてスクリーンにはWEGらしい映像が。
MCどころか挨拶すら一切無く、ただただ演奏が繰り広げられた。
曲と曲の切れ目すらも曖昧で、長い長い一つのショーを音楽で聴いた、といった感じだった。
曖昧模糊とした非現実な空間にするするすると連れていかれたので、演奏が終わって現実世界に引き戻された時には取り巻いていた霧がぱっと消えたかのようで、何とも言えない不思議な心地がした。

ちなみにWEGはサイトがかなり凝っていて、色々なものが埋まっていたりするので興味のある方は覗いてみては。

Hurtbreak Wonderland
「Hurtbreak Wonderland」world’s end girlfriend

The Lie Lay Land
「The Lie Lay Land」world’s end girlfriend

+

この後まだまだフェスは続いていたのだけれど、ここで離脱。
3500円でこれだけ楽しめたら、十分満足。
わりとどれも最前列で見られたのもよかった。

そして…会場がnestじゃないのにnest festivalということに今更気付かされた09…。

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2009/10/17

堕ちる雲

Img_4263

雲がひとすじ、堕ちる。
青い空にすーっと真っ直ぐな軌跡。

創作をしている時に。
発想が何処からか堕ちてくる、という時がある。
すとん、すとんと。
本来在るべき場所にピースがはまっていくように。

足りない、という思い、劣等感、焦燥。
でもそれは欠落じゃなくて
その時、その時で
ピースがはまる土台の形が
人それぞれ違うだけなのだ。

世界は色々が繋がっていて。
どこか曖昧で、うっすらとゆるくて。
そしてはじめから許されているのかもしれない。

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2009/10/12

TOKYO GRAPHIC PASSPORT(ベルサール原宿)

ベルサール原宿で行われた「TOKYO GRAPHIC PASSPORT」に行ってきた。
+81Creativesによる二日間行われるクリエイティヴ・イベントなのだけれど、チケットをもらっていたのが11日の第一部だけだったので、それを目指して会場へ。
第一部のゲストは、鴻池朋子さん、蜷川実花さん、名和晃平さんの3人。

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受付で、ピンクのパスポートを受け取る。
これは会場の出入りに使うパス兼メモ帳になるのだけれど、Moleskineというところが素敵。
自分のプロフィールを書く用紙やゲストのプロフィールの用紙などがあり、ページに自分で自由に貼ることでオリジナルのパスポートをつくれます、というコンセプト。

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鴻池朋子(Konoike Tomoko)

先端で、さすわさされるわそらええわ

川上未映子さんの「先端で、さすわさされるわそらええわ」の装丁とか何かで何度か目にはしていて、非常に個性のある絵として記憶されてはいたのだけれど、描いている人の名前は全然知らなかった。
しかも、ただのイラストレーターさんではなくて、襖絵も映像も立体物もつくる現代美術家の方だった。

先日東京オペラシティアートギャラリーでの展示「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」を終え、現在鹿児島県にある霧島アートの森で「インタートラベラー 12匹の詩人」を展示中とのことで、これら展示に関する話が中心。

鴻池さんにとって展示は一人で準備できるものではなく、何をどこにどう配置するか、どういうものにしたいかということを、末端まで共有し明確な指示が出せているか、ということがポイントになるそう。
そして、絵画というものは、設置するだけで劣化し風化していくものであるという。
その感覚はなんかわかる。
人々の目に触れ続けることで、絵画自身にも何らかの変質が起こっていそうだもの。
エネルギーの交換、みたいな。

空間の歩き方で作品との対峙の仕方が変わるものだから、オペラシティと霧島アートの森では、展示物が一緒でも全く別物の展示になるというのが興味深かった。

作品をつくる時はまずそこに匂いや手触りという「感覚」があるのだという。
その曖昧模糊とした影に実体を与えてあげることが、アーティストの業なんだろうなと思った。
作品へのこだわりの強さなどとても魅力的な方で、ああオペラシティの展示観たかったなぁと思った。
さすがに鹿児島へひょいっと飛ぶこともできないので観ないまま終わってしまいそうだけれど、栗野岳中腹にあるという霧島アートの森はいつか旅行と組み合わせて行ってみたい場所。自然とアートの共存というのがとても魅かれる。

+

蜷川実花(Ninagawa Mika)

インタビュワーの方と話しながら最近の作品を見つつ解説しつつという感じだった。

蜷川実花 フラワー・アディクト

見せていた作品は「蜷川実花展 地上の花、天上の色」でも展示していた、「フラワー・アディクト」に収録の色水を吸わせて人工的に着色している花や金魚、どこか暗く毒のある新境地のシリーズ「ノワール」など。
完全に自然の姿のままのものよりも少し人の手を介した物が好きという話をしていた。

インタビュワーの方が「蜷川さんの写真は劇場的」ということを何度も言っていて、たしかにそうだなと思った。
大自然の姿をありのままに撮るというのは些とも蜷川さんの作品らしくなくて、画面の中に何らかの「演出」もしくはそれに相応するような存在感を持つ強いモチーフがあるのが「THE 蜷川実花」の写真という気がする。
蜷川実花をよく知らない人は、ただ「ああいう色彩がどぎつい写真は苦手」と敬遠したりするのだけれど、彩度が高くてぎらぎらした作品ばかりじゃないのにね。

月刊”熱帯魚”—ボクタチオンナノコ

月刊”熱帯魚”—ボクタチオンナノコ」に収録のニューハーフの人だけを撮ったシリーズがあって、私は今回初めて見たのだけれど、女性顔負けの美しい写真に目を奪われた。
モデルには、身体がまだ男性のままの方もいたり、手術済みの方もいたり。
手術済みの方の場合、蜷川さんは人工的につくられた完璧で隙のない「女性の形」に魅かれるそうで、たしかにそれは前述した花や金魚に共通する要素があると思う。
この写真集気になる。
生まれつきの女性よりも、自ら女性を選んで努力してそれを手に入れた人の方が、やっぱり磨いて磨いて自分の「女らしさ」を大切にするんだろうな。

【関連記事】

蜷川実花による蜷川実花

蜷川実花展 地上の花、天上の色(東京オペラシティ アートギャラリー)

映画「さくらん」

+

名和晃平(Nawa Kohei)

ドローイングノート:名和晃平

現代美術家の方で、ジャンルごとに今までつくってきた作品を解説していた。

「DRAWING」
撥水性のある紙の上にゲルインクで描いたものや、洗剤とアクリル絵の具を組み合わせて泡状になるもの、エアブラシ、メディウムを10種類くらい混ぜたもの、などなど。
どれも小さなものたちの集合で一つの大きな作品になっていて、その出来上がる過程も偶然にまかせている部分も大きく、不思議な形の作品が多い。生物、細胞をイメージさせる。

「BEADS」
キャベツの表面に透明のビーズをびっしり貼った作品が有名。
その他は、主に動物の剥製にビーズを貼ったものなど。
動物の表面に泡が結実したような印象で、ビーズ越しに見るだけで全く違った物になる。
小さな粒の連続が一つの形になっていて、ピクセルとセルとをかけているのが面白い。
ただ、つぶつぶとかぶつぶつがあまり得意ではない私は、この作品をじっと見ていると背筋がうぞぞぞと痒くなる。

「PRISM」
アクリルボックスの中にシマウマだったり、マシンガンだったりがはいっている。
中に光の方向を二つに分けるフィルムがはいっているので、モチーフに特に手を加えなくとも違った角度に映っていたりして全く違う不思議な物になる。
無影空間。

「SCUM」
灰汁、屑、塵という意味。
霧状の発砲ポリウレタンを様々なモチーフに吹き付けた作品は、モチーフの表面に雪が積もったような白い毛が生えたような感じで、モチーフの形の差異だけが際立つ。

「LIQUID」
アクリルのシリコンオイルが満たされた水槽に、水が丸い粒になって落ちて行く作品。
丸い粒状の水は、通常無重力空間などでないと見られないものなので面白い。

全体的に、意味がプラスマイナス0になるようにモチーフを選んでいるという話が興味深かった。

+

約3時間の第一部、程よくお腹いっぱいの分量だった。
3人とも、「もう10分前?」など、講演を短くまとめるのが大変そうだった。
皆さんまだまだ話足りなそうだったので、一人当たりの時間がもう少し長くてもよかったんじゃないかな、と思った。
たしかにあっという間だったので。
皆さん話がうまくて、とても面白く聞けたイベントだった。
クリエイターの方の「創作」に関する話は、本当に興味深い。
行ってよかった。

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2009/10/10

映画「空気人形」

Kng空気人形

監督 : 是枝裕和
原作 : 業田良家「ゴーダ哲学堂 空気人形
出演 : ぺ・ドゥナ 、 ARATA 、 板尾創路 、 オダギリジョー 、 高橋昌也、 星野真里、 富司純子、 寺島進

私は空気人形。空っぽな、誰かの「代用品」。

はじめはWorld's End Girlfriendが音楽を担当した、ということで興味を持った作品。しかも主演がぺ・ドゥナ。ベジとドナのCM以来気になっていた美しい女優さん。
仕事後に渋谷のシネマライズへ。

中年男性の秀雄は、寂しげな小さな町にある自室のアパートに空気人形を置き、自分の彼女のように扱って生活をしている。
しかし、ある日その空気人形は心を持ち、動きはじめる。
外の光を目にした彼女から言葉が溢れる。
「キ…レ…イ」
街に出た彼女は、レンタルビデオ店で働く純一と出会うが・・・という話。

私は、「心」を持ってしまいました。
持ってはいけない「心」を持ってしまいました。

この作品は、込められたメッセージと、それを伝えるための設定が非常によく考えられていて、それぞれの対比が面白い。
たとえば、身体の中が空っぽだけれどあたたかい心を持った純粋な空気人形に対して、身体の中は空っぽじゃないけれど心が空っぽな現代の人々。
身体の中が空っぽで、ただ産まれ死んでいくだけの生き物「カゲロウ」の話。
歳をとらない空気人形と加齢を怖れる女性。
食事をしない空気人形と過食嘔吐の女性。
誕生日も家族もない空気人形と父親に誕生祝いをされる女の子。

誰もが自分の中の空虚や欠落を埋めたくて、でもその埋める方法がわからなくて手近な何かに逃げてしまって、そこから抜け出せなくなる。
空気人形の持ち主秀雄も、結局は女性との関係を築いていくのが面倒で、全て自分の言いなりになる人形に逃げている。彼は職場ではうだつのあがらない下っ端なのに、人形の前では部下に叱責するような理想の自分を演じ、何だか悲しい。
そこに幸せは、美しさは、あるのだろうか。
片目を瞑って何かを見ないようにして、騙しているだけなのではないだろうか。

自分の投げた石が、誰かに波紋を起こすかもしれない。
世界は人と人の関わりで成り立ち、それは幾重にも波を起こす。
それは時には面倒なことも齎すかもしれない。
でもそのハーモニーは、きっと、最後には美しく鳴る。
孤独、空虚、欠損、欠落。
それらを満たすのはそういうものなのではないだろうか。

事故によって空気が抜けてしまった空気人形は、愛しい純一に息を吹き込まれることで本当の「生」を得る。
恥じらいや悦びを凝縮したその甘美なシーンは、欺瞞も駆け引きもない、純粋な愛すること愛されることの幸福感を伝えているように思う。
私たちは歳をとればとるほど、この純粋な思いを忘れていってしまっていないだろうか。

この映画は、人形が人のように動きだすというファンタジーである。
下手すると安っぽいものになってしまうその設定は、ぺ・ドゥナという素晴らしい女優とWorld's End Girlfriendの美しい音によって見事に結実している。
美しい音と光に包まれたキレイな世界。
世界に初めて足を踏み出した空気人形の視点がそのまま絵になっているかのような雰囲気。
ああ、そうだ。
世界はこんなにもキレイで、こんなにも驚きと発見に満ちていた。
私たちは日々その世界に生きている。
殻に閉じこもって目を瞑ってしまったらどれだけ勿体ないのか。
この世界の「キレイ」をたくさん見て、触れて、関わっていくこと。
それは自分次第でいくらでもできるのだ。

そして、ぺ・ドゥナが朗読する吉野弘氏の詩「生命は」が素晴らしい。
サントラにも収録されているのだけれど、私はこの朗読を聴くと涙がこみ上げてくる。
自分自身で完結できない生命、その欠如をお互いに知らず知らずに満たし合って世界ができていることをうたっている。
この映画で言いたいことが見事に濃縮されている、美しい詩。

空気人形 O.S.T.

空気人形 O.S.T.
World's End Girlfriend

この映画の世界観を支える、美しいサントラ。
WEGの音楽にのせた、ぺ・ドゥナのよる吉野弘氏の詩の朗読「水野線路/生命は」が素晴らしい。
その他の曲もとてもよくて、この曲を聴きながら見る光景は、何だか普段よりもずっと美しく見える。
おすすめのサントラ。

この映画の印象が、何となく岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」と重なった。
美しい音楽に包まれた、透明で脆くて美しい世界の、少し切ないお話。

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2009/10/06

果てまで続く空

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広い世界。
広さの分だけの可能性。
何とでもなる。

+

雨上がり

THE BLUE HEARTS
作詞:真島昌利 作曲:真島昌利

雨上がりの夏の夕暮れ
まるでサイダーそのままサイダー

日焼けした顔笑ってごらん
水たまりには宝物

それだけじゃないよ空には
一枚きりの水彩画が
風の筆さばきにじんでる

なくした物が出てきたような
心が踊るいい感じ

まさかこれで虹が映りゃ
世界は止まってしまうだろう
今日のナイターもおあずけだ

雨上がりの夏の夕暮れ
照れたお日様ながい影

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