« 活字の濾過 | トップページ | スパイラルカフェ「文庫本セット」 »

2009/09/07

卵の緒 / 瀬尾 まいこ

卵の緒

卵の緒
瀬尾 まいこ

坊っちゃん文学賞大賞受賞作

---

僕は捨て子だ。子供はみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。

育生は母親と二人暮らし。
自分は本当の子供ではないのではと思った育生は、学校で教えてもらった「へその緒」を見せてくれと母親に頼む。
しかし母親が見せてくれたのは卵の殻。
「母さん、育生は卵で産んだの」
けろりとそんなことを告白され・・・という話。

卵の殻や卵で産んだ発言を見ればわかるように、育生の母親は一般的な母親像とは異なる。
少し変わっていていつでものほほんとしているけれど、自分が思った通りに行動し、育生への愛情を真っ直ぐ示す人だ。
そんな様子を見ていると、へその緒でも卵でもどちらでもいいじゃないか、という気持ちになってくる。
一番大切なのは今そこにある愛情なのだと。
この親子の軽快なやりとりがほほえましく、とても優しい気持ちになれる作品。
誰かを大切に思うこと、大切な人と美味しいものを食べること、そういうことの重要さを再認識し、自分も誰かとあたたかい食卓を囲みたくなる。

そういえば先日、駅のホームで電車を待っていたら、もの凄い勢いで子供を怒鳴る母親がいた。周囲の人は驚いて皆振り向き、子供は鳴き声もあげずに項垂れていた。いつもああいう叱り方なのかもしれない。
でも、本当に子供の為に叱る言い方と、大人げなくかっとなってぶつける怒鳴り声は、第三者が聞いても違いがわかるものだ。
育生の母親のように、心底息子を愛して、愛して、愛情を注いでいたら、きっとああはならないのではないだろうか。
親は大人としていつでも冷静に、でも心はうんとあたたかく。
そんな風にあって欲しい。
理想だけど。

併録の「7's blood」は、異母兄弟の七子と七生の話。
母親が刑務所にはいってしまった七生を七子たち母娘がひきとったところ、すぐに七子の母親が体調を崩して入院することになり、結局七子と七生二人で生活することになってしまう。
はじめはなかなかうまくいかない二人が次第に気持ちを通わせ、絆をつくっていく過程は、表題作同様とてもあたたかい。
二人が深夜から早朝にかけて散歩する場面がとても好き。

家族は、本当にあたたかくて、そこには必ず強い絆がつくれる。
家族間で傷つけるとか悲しいニュースが多い昨今、こういう本が広く読まれるといい。

瀬尾さんの作品は初めてだったのだけれど、読んでよかった。

卵の緒の詳細情報はこちら

|

« 活字の濾過 | トップページ | スパイラルカフェ「文庫本セット」 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158210/31279323

この記事へのトラックバック一覧です: 卵の緒 / 瀬尾 まいこ:

« 活字の濾過 | トップページ | スパイラルカフェ「文庫本セット」 »