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2009/09/20

泣かない女はいない / 長嶋 有

泣かない女はいない

泣かない女はいない
長嶋 有

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先日、スパイラルカフェ「文庫本セット」で選んだ作品。

ピサの斜塔は完成する前から既に傾き始めていたという。よくみれば塔の上部は辻褄をあわせるように少しずつ角度を変えて、なんとかまっすぐにみせようとしてある。

郊外の下請け工場で働き始めた主人公睦美は、運の良さだけで立ち続けている建物の存在に安堵している。
どこかのんびりとした空気の会社が舞台。
睦美はそこで同棲中の恋人がいるにも関わらず新しい恋をし、リストラに合う従業員の姿を目にし…と様々な思いと悩みを抱える事になる。

睦美が思いを寄せる樋川さんはカラオケでボブ・マーリーの”NO WOMAN NO CRY”をうたう。彼は題名の意味を「泣かない女はいない」と説明し、睦美はそのことがずっと心に引っかかる。睦美は泣いたことがなかったのだ。
この歌はボブ・マーリーファンの間でも解釈が分かれるもので、「泣かないで」という慰めの歌という人もあれば「泣かない女はいない」だという人もいたり、さらなる別の解釈をする人もいたり…と。だから、樋川さんが何故そう解釈したのか、というところが彼という人を表す重要なポイントになっていると思う。

全体的に淡々と描写され、空気もゆるゆるとしている。
花開きかけた恋が大輪になるような派手さも、無惨に朽ちていく悲惨さもない。
でも何故かじんわりと時間が経つ程に染みていく、不思議な作品である。

併録の「センスなし」は、不倫している夫と不仲の主人公保子が雪の日に出掛ける話である。
学生時代の友人、みどりと電話で話しながら、みどりと共に聖飢魔Ⅱを聴いていた学生時代のことを思い出す。
私はどうせ音楽のセンスが悪いと自分を蔑むみどりに対して、音楽のセンスがいい夫良一。でも彼は愛人との趣味の悪い写真をカメラに残し、アダルトビデオを何本も延滞して保子に迷惑を掛ける。
保子は涙が透明でないことに気付く。
音が吸い込まれるような雪の日、どこかから聴こえるG線上のアリア。
「センスなし」なのに、センスのいい静かな余韻が残る作品。

「泣かない女はいない」詳細はこちら

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コメント

泣かない女性・・・。女性には泣いて欲しいと思う僕ですが、どんなことで泣のか、どんなシュチエーションで泣くのか、によりますね。

投稿: 次郎 | 2009/09/20 21:47

そうですね、泣けば許されると思う類いの涙が私は苦手です。
誰もいないところ、一人で泣く時の涙が本当なのかな…と。

投稿: *yuka* | 2009/09/21 15:05

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長嶋有、1972年生まれ、東洋大学2部文学部国文学科卒業。2001年、「サイドカーに犬」で第92回文学界新人賞、2002年、「猛スピードで母は」で第126回芥川賞を受賞しました。また、小説家「長嶋有」以外に、コラムニスト「ブルボン小林」、俳人「長嶋肩甲」としても執筆... [続きを読む]

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