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2009/08/23

終の住処 / 磯崎 憲一郎

終の住処

終の住処
磯崎 憲一郎

第141回芥川賞受賞作

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磯崎さんの作品は、第44回文藝賞受賞作である「肝心の子供」しか読んだ事がなかったので、今作で彼の作品はふたつめ。

三十歳を過ぎてから結婚した主人公の男性の結婚生活と仕事の様子について淡々と語った作品。タイトルから察しがつくように、結婚から晩年前の頃までに渡って描かれる。

デビュー作同様、描写の積み重ねで出来ている作品である。
登場人物による会話は非常に少ない。
現代の話であるけれど、どこか御伽話めいたような掴みどころの無い印象である。
また、そのせいなのか登場人物たちの印象も薄く、第三者である我々が主人公を取り巻く世界を覗き見したような感じである。

デビュー作同様、私の好みではない作品なのだけれど、でも磯崎さんの書く作品は、丁寧に堅実に綴られているということに好感が持てる。
余分な熱さや脂を剥ぎ取ったような雰囲気で、中高年の方におすすめの作品であるように思う。

沢山の会話や力を抜いた描写で行間を誤摩化してしまう作品が多い昨今、このようにちくちくと丁寧に行間を文字で埋められた作品には安心する。
積み重なる時間、その中で変化していく夫婦関係、会社での立場。
でも結局、晩年になってふと振り返ってみれば、案外人間の本質なんて変わっていないのかもしれない。
そんな風に思える作品。

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投稿: BlogPetのmintdrop | 2009/08/26 14:02

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» 磯崎憲一郎『終の住処』(新潮社)を読む [吉岡家一同おとうさんのブログ]
磯崎憲一郎さんの『終の住処』(新潮社) を読みました。言うまでもなく、第141回芥川賞を授賞された作品です。左の写真は新潮社から単行本として出版された際の表紙なんですが、初出は「新潮」6月号に収録されています。2008年2月1日付けのエントリーで紹介した『肝心の子供』(河出書房新社) と同じように、20年間ほどの極めて長い時間の流れを中編くらいの小説に収めたものです。なお、私は「新潮」6月号収録のものではなく、単行本でもなく、芥川賞受賞作品を読む際のいつもの通り、受賞作品を全文掲載している...... [続きを読む]

受信: 2009/08/23 22:11

» 磯崎憲一郎の「終の住処」を読んだ! [とんとん・にっき]
第141回芥川賞受賞作、磯崎憲一郎の「終の住処」を読みました。初出は「新潮2009年6月号」です。書き下ろしの僅か29ページの「ペナント」という作品と合わせて、2009年7月25日に単行本「終の住処」(新潮社、定価:本体1200円税別)として発売されました。さっそく購入して... [続きを読む]

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