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2009/07/19

ドラママチ / 角田光代

Drmmt

ドラママチ
角田光代

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中央線沿線の街を舞台にした、8つの短編集。
どれも近所の話なので、あ、これあのお店だとか、あのへんだなとか、そういう楽しみ方もできる。
全てタイトルが「〜マチ」になっている。
読む前は「街」かと思っていたけれど、そうではなくて「待ち」だった。
何かを「待つ」人たちの話。
以下、印象に残った話。

コドモマチ

子ども(妊娠)待ちをしている主人公が、夫の不倫相手をつけまわす話。
浮気の調査に麻薬犬並の嗅覚を持つと自負する主人公が、夫の不倫の様子を把握し、不倫相手を毎日観察する様にはちょっとぞっとするものの、じっとりとした描写の割りに主人公からは不思議と嫉妬心が感じられない。気持ちによって突き動かされている、というよりは、まるで義務のように、仕事のように彼女は尾行を続ける。そこには病的な何かを感じる。
けれど、冷えきった彼女の感情の裏に彼女の弱さが垣間見えて、少し悲しくなった。

ヤルキマチ

何ごとにもやる気が無く、人を見下すことで憂さ晴らしをしている主人公。
彼女には長い付き合いでマンネリになっている不倫相手ナカニシさんがいる。
そんなやる気のない彼女とは対照的に、夫に浮気されて離婚をし、浮気相手から慰謝料をふんだくるんだと息巻くまりっぺ。
主人公は「待つ女と待たずにすむ女がいるのはなぜか」と考える。
十年近く待っている自分に対して、さほど待たずにまりっぺの元夫を手に入れた浮気相手。
主人公は、待つことでやる気はなくなり、体重の増えた巨体だけしか手にいれていない。
そのことに気付いて愕然とする。
「やる気」というのは、本当に波があって、やる気のない世界に足を踏み入れてしまうと、やる気があった時の自分を遠く他人のように感じてしまう。
でもその逆で、やる気にスイッチさえいれてしまえば、再びやる気のある世界に簡単に戻れるものだったりもする。
惰性で拘って守っていたもの、それがハリボテであることにさえ気付いてしまえば、自分の怠けをそれのせいにして逃げたりしなくなるはず。

ドラママチ

付き合いが長くなってマンネリ化し、付き合いはじめのようなドラマチックなことの消失を悲しく思う主人公。自分が手に入れたいと思っていた男はこんな男だったっけ?という幻滅の日々。
けれど、物件を見にいった時に出会った大家の老婆の話をきくことで、主人公の視界は開ける。
日々のどこにドラマを見出すか。それはいわゆる絵に描いたようなドラマチックさなんて全くなくても、小さな起承転結が繰り返すその日々を愛しいと思って見つめることである。
夫やパートナーとの日常生活に飽き飽きしている人に、読んでもらいたい作品。

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