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2009/05/06

論理と感性は相反しない / 山崎 ナオコーラ

論理と感性は相反しない

論理と感性は相反しない
山崎 ナオコーラ

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たいがいにおいて。
宇野亜喜良さんのイラストを装丁に使われると、それだけで素敵に見える。私の中で。
装丁と秀逸なタイトルだけで80点くらいとってしまいそうな本。

全編書き下ろしのこの本は、15作の短編と掌編からなる。同じ登場人物がでてきたり、それぞれがどこか繋がっている。深読みしようと思えばいくらでも出来そうな作品。

書き下ろしだからか、蓋を開けてみれば随分玉石混合。
軽くて読みやすいという点では楽しめるのだけれど、私が装丁やタイトルから受けた印象とはだいぶ違った。
あえてふざけているんだろうな、あえて予定調和をねらっているんだろうな、というのが目について、なんだかその具合が私には合わなかったり。
でも、表題作とそれに関連する話とか、好きな話もあるので読んでよかった。

以下、気になった作品の感想を。

論理と感性は相反しない

同棲しているカップル、神田川と真野の話。
いつも飄々としておちゃらけている神田川がかわいい。
一緒に暮らす男女の小さな諍いとか、仲直りの仕方とか、一寸したエピソードがうまい。
でも、物語の閉じ方が強引でいかにも作り話めいた体裁をあえて持たせてしまっているのが残念。

人間がでてこない話

色とか光とか風とか、そういうものについてちくちく語っている掌編。
言葉の使い方とか、着眼点とかが、きれいな詩っぽい。
ふわふわと風に吹かれて沢山の色の破片が舞っているイメージ。

恐怖の脅迫状

小学生の男の子が、クラスの女の子に机の中にこっそりバレンタインのチョコをいれられる。そのことを面倒がったり、腹立たしく思ったりしていると、今度は脅迫状が・・・という話。
女の子側の計算高さやべたべたさに対する、男の子側の冷めっぷりや正直なところが爽快な話。たしかに彼女の行為は一寸怖いのだけれど、幼くて無知であるが故の的外れな情熱とか空回りってあるよね・・・。

架空のバンドバイオグラフィー

こういう、架空のバイオグラフィーで、真面目な筆致であえてどこかずれた内容を書いて笑いをとる、というスタイルって特に目新しくもないし(小説ではあまりないかもしれないが)、なんだかちょっと寒い気がしてしまった。

ブエノスアイレス
秋葉原

アンチポデスの関係である、神田川とボルヘスの話。アンチポデスというのは、自分の足の裏側、地球を挟んで丁度真逆にいる自分の反対の存在のことらしい。神田川がブエノスアイレスに旅立った時、ボルヘスは秋葉原に来ていた。
永遠に出会う事は無い神田川とボルヘスのそれぞれのなんでもない話なんだけれど、一寸しみじみとしてかわいらしくて、なんだか柴崎友香さんっぽい世界観。

化石キャンディー

化石を見て、いつか自分も石になるんだと考える子供の話で、間とか雰囲気が好き。
柔らかくてあたたかいものも、いつかは冷たくて味もないものになってしまうんだよな。

社長に電話

作者自身をモデルにしているように思われる、作家矢野マユミズのサクセスストーリー。やれ四十歳で「情熱大陸」に出ただの、六十歳でノーベル文学賞 を受賞してお屋敷を建てただの、こてこての展開が淡々とした簡単な言葉で綴られるばかりで興醒めしてしまう。淡々具合はやや群ようこさ んっぽいのだけれど、予定調和すぎるストーリーがつまらない。あえてそうしているのはわかるんだけれど・・・。

まったく新しい傘

雨が降ったら埼玉県自体を大きな傘で覆ってしまいましょう、という話。
童話っぽい。
そういえば傘って本当に長い間進化しないね。
それを言ったら、服だって靴だって帽子だって手袋だってそうなんだけれど。

アパートにさわれない

「論理と感性は相反しない」のその後にあたる話。
アパートにさわれない夢をみたという件の描写が好き。二度と戻らない距離へいってしまった過去を暗示する。
思わず、フローリングの継ぎ目を撫でてしまった。
化石キャンディーの化石と、神田川が拾った石との意味が繋がる。
個人的には、このお話が15編目、最後にきたらよかったのにと思った。

「論理と感性は相反しない」書籍の詳細はこちら

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山崎ナオコーラ、1978年9月15日、福岡県に生まれる。その後、埼玉県で育つ。國學院大學文学部日本文学科卒業。2004年、会社員をしながら書いた「人のセックスを笑うな」で第41回文藝賞を受賞して作家デビュー、と経歴にはあります。僕は彼女の作品は、「人のセックスを笑... [続きを読む]

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