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2009/05/17

白い紙 / シリン・ネザマフィ

文學界

白い紙
シリン・ネザマフィ

第108回文學界新人賞受賞作

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前回の記事で書いた、イラン人のシリン・ネザマフィさんによる作品「白い紙」
イラン・イラク戦争時の男女の淡い恋愛を描いている。

母語ではない日本語で書いている為、ところどころ日本語の表現にかたさがあったり、誤っている部分もあるものの、下手な日本人よりもよっぽど文章が上手いと思う。

作品自体は、若い男女が戦争という環境によって引き裂かれてしまうという悲恋話で、古典的であると思う。でも最近の新人賞受賞作には新しさばかりを狙うあまり、土台がぐにゃぐにゃしている作品が多かったりもするので、何となく安心する誠実さを持っているという点で好感が持てる。

男女が公の場で言葉を交わすことさえもタブーとされている地域での話なので、主人公と主人公が思いを寄せるハサンとの距離感、コミュニケーションのとり方などに新鮮味がある。デートが、距離をおいて一緒に歩いて向かうモスクへの礼拝だったりするのだ。現代日本の若者の恋愛とは大違いだが、戦時中の日本の様子に近いのかもしれない。
作中にでてきた、モスクで配られる「ハルワ(ハルヴァ)」が食べてみたくなった。「ハルヴァ」で検索してみたら、結構このお菓子の美味しさに魅せられてしまった人がいるようである。うう、食べたい・・・。

行った事がない場所、異文化圏での話なのに、きちんとその情景を思い描きながら読めるのは、彼女の描写力が確かだからなのだと思う。ただただ自意識が垂れ流されるような作品とは違い、作者が作品との間に明確な線引きを行い、客観的に描けている。だから、小説を読んだというよりも、何となく映画を観たという感覚に近い。

イラン人の方が書いたとは思えない、よくできた作品。
ただ読後の印象が薄くて、「優等生的な無難な作品」という感想を持った。

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» シリン・ネザマフィの「白い紙」を読んだ! [とんとん・にっき]
文芸春秋社の「文学界」2009年6月号に、「第108回文学界新人賞発表」とあるので購入しました。必ず買うというわけではなく、掲載されている作品が「芥川賞」に近そうだという、その時の匂いというか、判断で買ったり買わなかったりの、気まぐれな読者です。たまたま昨年の... [続きを読む]

受信: 2009/05/18 11:51

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