« 静かに重ねる色 | トップページ | カレーの店 プーさん(武蔵小金井) »

2009/04/06

満開の桜の樹

何があんな花弁を作り、何があんな蕊を作っているのか、俺は毛根の吸いあげる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ。

梶井基次郎      「桜の樹の下に」

Img_3735

先日、近所の善福寺公園でお花見。

Img_3731_2

いつもは静かな公園も、お花見日和のこの日は賑やか。
笛の音まで響く。

お花見って、何故かどこかしらから太鼓とか人の内側の何かを高揚させるようなリズミカルな音がきこえてくる。
先日夜桜を見に行った中央公園でもそうだった。
遠くで太鼓がトントントトン……。
桜の樹の下にいると、日本人の血、が騒ぐのか。

Img_3734_2

桜を主題にした小説といってまず思い出すのが、梶井基次郎「桜の樹の下に」と 坂口安吾「桜の森の満開の下」なのだけれど、そのどちらも一寸恐ろしい話である。
本当に美しいものは、冷たさと怖さが共存するものなのだろう。

目を閉じてもわかるくらいの圧倒的な存在感で。
見事に一斉に咲き誇る、桜。
その花の命は短くて。
美しい物は儚いのか、儚いから美しいのか。

ぶわっと満開になり、散りゆき、薄桃色の絨毯をつくり、やがては消えてしまう、その花。

--

彼の手の下 には降りつもった花びらばかりで、女の姿は掻き消えてただ幾つかの花びらになっていました。そして、その花びらを掻き分けようとした彼の手も彼の身体も延 した時にはもはや消えていました。あとに花びらと、冷めたい虚空がはりつめているばかりでした。

坂口安吾「桜の森の満開の下」

|

« 静かに重ねる色 | トップページ | カレーの店 プーさん(武蔵小金井) »

「心と体」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

コメント

梶井基次郎、坂口安吾・・・、僕の青春時代(今もある意味青春ですが)に親しんだ文学が懐かしいです。

投稿: 次郎 | 2009/04/08 23:39

そうなんですね。
昔の作家さんは、文章が美しい方が多いですよね。
新しい作家さんには、なかなかそういう方がいない気がします。

投稿: *yuka* | 2009/04/09 22:59

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 静かに重ねる色 | トップページ | カレーの店 プーさん(武蔵小金井) »