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2009/04/12

ダイアログ・イン・ザ・ダーク(Dialog in the Dark TOKYO 2009)

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先月、真っ暗闇のエンタテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」に行って来た。

これは視覚を完全に遮断して体験するイベント。
五感のうちの視覚以外の四感を使って真っ暗闇の空間を進むのだ。
勿論、いきなり真っ暗闇の中に放りこまれてもどうすることもできないので、視覚障害を持つアテンドスタッフに声で案内をしてもらう。

1989年にドイツで、哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれたこのイベントは、世界25か国・約100都市で開催され、2009年現在で600万人以上が体験しているのだそう。

今回、初体験となる私は、外苑前からてくてく会場へ。
会場は地下にある。
荷物をロッカーに預け、ロビーの椅子に腰掛けて待つ。
カモミールティーが出されたので、それを飲みつつ、置いてある冊子を読みつつ。

参加者は一度に8名まで。
4人家族、カップル、姉妹、一人参加などなど。
私はこのイベントの主旨的に一人で参加したかったので一人参加。
誰かと参加すると、その人に頼ってしまって、本当の意味の「暗闇との対話」が出来ないと思ったからだ。

まずは白杖という視覚障害者が使う杖を、一人一人自分に合った長さのものを選ぶ。
だいたい胸から腰の間くらいの長さのものがいいらしい。

白杖を持って、暗くした部屋へはいる。
既に十分暗いのだけれど、まだここは真っ暗ではない。
目が慣れれば物が見えるレベル。
アテンドさんと会い、各自自己紹介をして、真の暗闇の部屋へはいる。

真っ暗な会場は、目の前にかざした自分の手すら見る事ができない。
勿論、時間が経って目がなれたって何も見えない暗さ。
視ることが出来ないその空間は、草が茂り、水が流れ、鳥が鳴き・・・。
アテンドさんの声を頼りに進んで行くと、足の裏で道の凹凸を感じ、手で茂る草やどっしりとした樹木を感じる。
空間の広さや、自分が進んでいる方向は全くわからないけれど、今自分がいるところの情景を「視る」のではなく「感じる」ことで把握ができるという体験。

道を進み、困った時は助け合い、縁側で寛ぎ、果物の香りを嗅ぎ、暗闇のバーで飲み物を飲み・・・。
嗅覚も味覚も、いつもよりずっと鋭敏で、とても濃く感じられた。

出会ったばかりの8人(+アテンドさん)がすぐに打ち解け、コミュニケーションをとることができたのは、やはり「視覚」が遮断されているからなのだろう。
普段、視ることで植え付けられている先入観の大きさや、人目を気にすることでいかに臆病になっているかを実感する。
また、視覚によって齎される情報量の多さと、それを処理して認識する為に他の感覚からはいってくる情報が制限されてしまっていることも。
暗闇のもたらす大きな安心感のもと、人と人が出会いコミュニケーションをとっていくということがどういうことか、原点に戻って考えたくなる。

私はその時々でふとした時に自分が延々考える漠然としたテーマというものを持っていることがあるのだけれど、最近ちょうど、人は何をもって存在を認識するか、在るとはどういうことかということを考えていて。
その繋がりもあって、このイベントに参加した。
普段私がつくっている「デザイン」はいわゆる「視覚芸術」で。
視ることでしか認識ができない。
紙に描いた絵であれば、まだ絵の具の盛り上がりや紙の質感を触覚で感じることができるのだろうけれど、WEBデザインともなると、完全に視覚でしかわからない。

だから、ふと、私がつくっているものって何だろう、と思うことがある。

デジタルの世界で様々な物が普及して、どんどん便利になって。
でもその、視覚にばかり頼るこの世界は何なんだろう。
視覚にばかり頼ることで、何かを見失っていないだろうか。
何かを忘れていないだろうか。

IT業界で働く自分がそんなことを考えることには矛盾があるかもしれないけれど
その、頼りきっている視覚を手放すことでできる対話と得られる何か。
それを求めて、何かヒントがもらえるのではないかと思って、参加したこのイベント。

まだ答えはでていないし、答えがでるような種類のことではないのだろうけれど、物事をみる為の今までになかった新たな角度を得ることができて、行ってみて本当によかったなと思った。

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コメント

DIDの記事にコメントありがとうございます。
と思ってとんできたんですが、先に、いっこ下のカレー屋プーさんの方に反応してしまいました。やー、プーさんカレー大好きでよく行くんです。
なんだろう、やたらテンション上がりました(笑)

DIDの感想もすごくわかります。
ネタバレになってしまうかなと思って自分のブログには書かなかったんですが、わたしもバーで飲み物を飲んだとき、グラスを近づけた瞬間に感じた匂いと味の濃さに驚きました。

投稿: トミモトリエ | 2009/04/12 20:05

コメントありがとうございます。

そうなんですね、プーさんよく行かれるんですね!
私はまだ一度しか行ったことがない新参者なのですが、なんだか嬉しいです。

ほんと濃いですよね。
あのバーで飲んだ飲み物の匂いや味の記憶が、未だにはっきりと残っていて不思議です。

投稿: *yuka* | 2009/04/12 21:31

TBありがとうございました。
ダイアログ・イン・ザ・ダークTOKYOは、
「イベント」という認識が自分にあったので(時がたてば終わる)、
純粋に世界に入り込めたわけでもなかったような気もしてますが、
視覚以外の感覚のみを研ぎ澄ます機会はあまり日常にはないので、
考えさせられる時間を過ごせたのは興味深いことでした。

これを体験した日もなんとなく思ったのですが、自分は、
 できることをする。
 できないことを知る。
以上でも以下でもないんだろうなあ、
と思います。それを分かったうえでも
うろうろ思考はうろついてしまうものですが、
うまい答えは出ないとしても、考え続けることが大事。
なんじゃないかと思い、日々考え続けていくような気もいたします。

投稿: wataNabe | 2009/04/12 23:18

コメントありがとうございます。

普段、完全な暗闇に身をおくような機会も無く、ほんと貴重な体験でした。
仕事では視覚ばかり使ってますしね。。。

たしかに、結論を出す事ではなく、考えるという行為そのものが大切なのでしょうね。
私も考え続けていきたいです。

投稿: *yuka* | 2009/04/13 22:13

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