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2009/03/09

海 / 小川洋子

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小川洋子

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小川洋子らしさが詰まった、不思議な感触の7つの短編集。

主人公の彼女の弟が引き出しにしまっているのは、魚の鱗と飛び魚の胸びれでできた「鳴鱗琴」という不思議な楽器。サイダー、夜、海風、海の生き物といったモチーフで構成される、涼やかでありながらどこか湿り気のある青、その空気を胸いっぱい吸い込んだ気持ちになる作品。

風薫るウィーンの旅六日間

ツアー旅行で六十代半ばの琴子さんと同室になった主人公。
養老院にいる昔の恋人に会いに行きたいという琴子さんに付き合うはめになる。
異国の地で触れる死の影。
それに対する琴子さんの図々しく憎めないキャラクターや結末のユーモアとのバランスが良い。

バタフライ和文タイプ事務所

事務所で働く主人公と、彼女が気になる顔の見えない活字管理人の話。
どこまでも静かで、冷たく、そこはかとなく漂うエロティックさ。
薬指の標本」に非常に似た世界観だけれども、主人公の妄想ぶりが少し笑いを誘う。

銀色のかぎ針

編み物の思い出を描いた、スケッチ風の美しい掌編。

缶入りドロップ

幼稚園バスの運転手だけが知っているかわいいトリックに、和やかな気持ちになる。

ひよこトラック

ホテルのドアマンである中年男性と、口のきけない少女の話。
少女は主人公に様々な抜け殻の贈り物をする。
あの抜け殻たちには、彼女が発せなかった声たちが詰まっているのかもしれない。
最後に、ふわふわとしたひよこたちの鳴き声の余韻が残るかわいい話。

ガイド

公認観光ガイドのママを持つ主人公がママの仕事に同行する話。
主人公が出会った小父さんの職業「題名屋」というのが、これまた「薬指の標本」の「標本室」に通ずる性質がある。
ママの背中を見て育った主人公、なんだかとてもあたたかい気持ちになる。

その他、小川さんのインタビューも収録されているので、これから小川洋子作品を読んでみようかなという方、小川洋子作品が好きだという方、どちらにもおすすめの作品。

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受信: 2009/03/25 22:53

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