« ただ降ること | トップページ | ある日の転機 »

2009/03/16

女王の百年密室—GOD SAVE THE QUEEN / 森博嗣

15759_1279372898

女王の百年密室—GOD SAVE THE QUEEN
森 博嗣

---

僕が死んでしまえば、僕の記憶はたちまち消えて、僕の言葉、僕の信号の一部だけが、しばらくは磁気の配列として残るだろう。
残像のように。
あるいは、
飛行機雲のように。
しかし、
その余韻ともいえる束の間の信号のゴーストに、
人の生の証しがあると信じる以外にない。
自然界に刻まれる一瞬の「乱れ」かもしれないけれど。
きっと虚像に違いないのだけれど。

それが、この物語だ。

やっと読み終わった、女王の百年密室。
通勤中の電車の中と家とでちょこちょこ読んでもなかなか終わらない、分厚い本、約600ページ。

2113年、取材旅行途中ナビゲータの故障で道に迷ったサエバ・ミチルとパートナーであるウォーカロンのロイディ。謎の老人に導かれ、美しい女王が統治する街ルナティック・シティに辿り着く。100年間外界から隔絶されているというその場所には独自の価値感があり、「死」という概念がない。だがある日、女王の塔で殺人が起きる。密室だったはずの場所で起こった殺人、だが殺人という事実を認識しない人々・・・。ミチルは一人犯人を捜そうとするが・・・という話。

一応ミステリーという体裁をとってはいるけれど、トリックや犯人がどうとかそういったことよりも、人の死とは、殺人とは、罪とは、といったことを考えていく哲学的な内容の話である。

100年もの間、塀の中だけで成り立っているという街の設定、2113年の世界からみた100年前の世界(ルナティック・シティは100年前で技術が止まっている)の描写などが面白い。
この世界観を味わうだけでも、十分読む価値のある作品である。

主人公が自分の生に悩み、どこに向かって進めばいいのかもがく様はどこか「スカイ・クロラ」と通ずるものがある。

混沌としていながらも凛とした静寂に包まれた思考、
世界はぱたりと時間を止め
その隙をつくかのように詩的な言葉がぱらぱらと流れ出す様子。
そういった森博嗣独特の世界が私は好きなので、この作品もとても面白かった。
終わり方も静かで非常にきれい。

そして、森博嗣作品は読んでいると必ず珈琲が飲みたくなる。

書籍の詳細はこちら

|

« ただ降ること | トップページ | ある日の転機 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158210/28637838

この記事へのトラックバック一覧です: 女王の百年密室—GOD SAVE THE QUEEN / 森博嗣:

« ただ降ること | トップページ | ある日の転機 »