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2009/03/01

沖で待つ / 絲山秋子

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沖で待つ
絲山秋子

第134回芥川賞受賞作

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最近の、絲山作品を読み返そうの続きで、「沖で待つ」も再読。
彼女が芥川賞をとった時、なんだか妙に嬉しくて、私まで気分が高揚したことを思い出す。
お祭りが嫌いだという絲山さんは、数度の芥川賞候補や一度の直木賞候補がすごく辛かったそうだけれど、自分を応援してくれる人たちが受賞を喜んでくれたことが嬉しいというようなことを言っていた。

主人公の女性と、同期の男性太っちゃんの話。
2人は、もしどちらかが先に死んだら、秘密を秘密のまま眠らせる為に相手のパソコンのハードディスクを壊すこと、という密約をかわす。そして自分の家の地図と合鍵を相手に託す。

新卒入社の同期という関係の、恋愛には発展しないけれど特別な深い繋がりについて描いた作品で、女性総合職についてきちんと書かれている。実際に営業職としての経験がある彼女だからこそ出せたリアリティなのだろう。みっともないところも何もかも見せて、相手が困ったら何が何でも助けてやる、そんな戦友のような関係。こういうのって、たとえば事務職とかだとないものね。毎日毎日戦っている営業職だからこその世界。
私はずっとデザインだとか、その他諸々社内で完結する仕事しか担当したことがないし、そもそも転職回数が多くて新卒の同期とのこういう関係って全く残っていなくて実は知らない世界なんだけれど、そんな私でも一緒にその苦境を味わったかのような気分になる。

冒頭に亡くなってしまった太っちゃんが登場するなど、どこかファンタジーめいたつくりではあるが、その浮遊感と仕事のリアルさとのバランスがうまく保たれている。
淡々としつつも芯があたたかい、絲山さんらしい作品。

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コメント

絲山作品「イッツ・オンリー・トーク」を読みました。たんたんと主人公の日常を描いているのに、ちっとも日常じゃない世界を感じさせる、また妙な生臭さも感じる不思議な小説でした。思わずひきこまれ一気に読みました。
女流作家の作品では、川上弘美の「センセイの鞄」と同じく印象的な小説でした。

投稿: 次郎 | 2009/03/01 21:16

読まれたんですね。合わないということもなかったみたいで、よかったです。
「センセイの鞄」もいいですよね。
ストーリーというより雰囲気の印象が強い、というところとか、似ているかもしれないですね。

投稿: *yuka* | 2009/03/01 22:32

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