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2009/02/13

ポトスライムの舟 / 津村記久子

Poto第140回芥川賞受賞作、「ポトスライムの舟」を読んだ。

新卒で入った会社を、上司のモラルハラスメントが原因で辞め、現在は工場のライン作業の仕事をしているナガセ。元はパートだったが、今では契約社員にまで昇格している。
ふと目にはいった世界一周クルージングのポスター、その費用163万円はその工場での自分の年収とほぼ同額であることに気付き愕然とする。
「わかった。貯めよう」
世界一周クルージングの費用を貯める事を決意したナガセだったが・・・という話。

奈良を舞台にしていて、関西弁でどこかのんびりと展開されていく。
薄給の仕事を掛け持ちし、何かに急かされるように働いていくナガセ。
「今がいちばんの働き盛り」という入れ墨を腕にいれたいと本人は真剣に悩んでいたりするのだけれど、読み手の笑いをどことなく誘う。

主人公ナガセは薄給に悩みながらも母親と2人暮らしをする独身の29歳で、彼女のまわりには学生時代の3人の友人が登場する。
カフェをひらいているヨシカ、結婚生活の愚痴ばかり話すそよ乃、夫との離婚に悩んでいるりつ子。

私自身独身で、同じ独身の友人と話す時「結婚して子供が出来てしまった友達って、どこか別の世界に行ってしまって話が段々合わなくなることがある」ということを耳にすることがあるのだけれど、会話が噛み合ないそよ乃とヨシカの関係はまさにそうである。この世代の、独身者と子持ちの既婚者とが過ごしている生活のカラーの違いのようなものをうまく表現している気がする。

主人公ナガセの年齢、29歳、30歳というのは、ちょうどそれぞれの生き方に違いが出て来る頃合いであると思う。
結婚して子育てに追われている人、念願だった自分のお店を持つなど仕事に生きている人、そしてナガセのように薄給であることに時に不安を抱えながらも将来の為に働き続ける人。
男性であったら、ここまでカラーは変わらない。結局男性は独身でも結婚しても子供がいても社会と関わり仕事をしていくから。
だが、女性というのは、仕事の有無子供の有無でまったく生活が違ってしまう。
そういった、この世代の様子をうまく表現できている話だなと思う。

世渡りがあまりうまくないけれど実直で優しいナガセ、彼女の小さな生活の小さな幸せたちを見ることができる。
ちょっといい話を読んだなと思える作品。

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» 「ポトスライムの舟」津村記久子 [りゅうちゃんミストラル]
第140回芥川賞受賞作、津村記久子の「ポトスライムの舟」を読んだ。     29歳から30になる派遣社員の女性ナガセが主人公。彼女は工場でクリームの検品作業をしている。友人のカフェでアルバイトもしている。老人相手のインターネット講師とデータ入力も兼任。...... [続きを読む]

受信: 2009/11/19 18:35

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