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2009/02/25

袋小路の男 / 絲山 秋子

Es1

袋小路の男
絲山秋子

川端康成文学賞受賞作

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あなたは好きな人と一夜を共にして別れるか、
何もないまま毎日会い続けるか

絲山さんは、私がちょうど文芸誌を読み出した頃に文學界新人賞をとってデビューされた作家さん。
いつデビューしたんだっけ、と思ったら2003年。
自分が文芸誌を読み出して、まだ6年くらいしか経っていないなんて短いな、と思う。
そもそも私は、小学生の頃はクラスで一番本を読んでいると言われるようなタイプだったけれど、中学生の頃はいわゆるティーンズ向けの軽い小説やミステリーしか読まなくなり、高校生の頃に至っては教科書に出て来た作品を読む程度。(でも何故か、教科書に載っていた四字熟語を全て使って夏目漱石の「こころ」のパロディを書いてクラスの子を笑わせるというようなおかしなことはやっていた…)大学生になってから、大学の購買部で買った群ようこさんのエッセイにひかれ、そこから段々読書にはまっていった。今となっては、本のない人生なんて考えられないし、純文学頑張れって思うし、自宅の本棚は洪水を起こしているし…。
そんなわけで、絲山さんは文芸誌に、文学というものに触れて間もない自分を思い出させる作家さんで、一寸特別な位置にある。

これは表題作「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」の三作でなる本。

「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」は、登場人物が同じで、前者は大谷日向子の視点で語られ、後者は三人称で日向子と小田切双方の視点で語られる。

日向子は小田切に片思いをしていて、小田切にいいように振り回され、周囲の友人には「あんな男やめなよ」と呆れられる。
手さえ握った事がなく、ただただ小田切を思い続ける12年。
恋人未満、家族以上の2人の不思議な関係。
そこには、絶対に千切れることのない繋がりがある。

この作品を「純愛」だとする人もいるようだけれど、そんなきれいなものではないと思う。
日向子は日向子なりに嫉妬をするし、単に関係を壊すのが怖いから踏み込めず、嫌われたくないから小田切の言うことをいいように聞いてしまうだけで。
それは純愛なんかじゃなくて、ただの臆病な恋。
でも誰しも、かたちは違えども、そんな臆病な恋の記憶はどこかに眠っているはずで。
惚れてしまった方の弱さを巧みに描いている、いい作品だと思う。

「小田切孝の言い分」を読む事で、恋愛には一方的な誤解や勘違いってつきものだよな、と思うと同時に、一寸救われる。

「アーリオ オーリオ」は、叔父と中学生の姪の話。
メールが苦手な叔父哲と姪美由の手紙のやりとりがほほえましく、星座等天体を小道具につかっているあたりもいい。

男女=付き合う、恋愛、ではなく。
ただ愛情を注ぐこと。
大切に思うこと。
その絶妙な距離感を表現した、あたたかい作品。

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書籍の詳細情報は こちら

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コメント

yukaさんは純文学的なものもお好きなんですね。ブログのタイトル「あなたは好きな人と一夜を共にして別れるか、何もないまま毎日会い続けるか」ですが、両方とも切ないですね。僕なら、やはり一夜をともにしたいかな。。僕が純文学で一番好きな小説は辻邦生の「夏の海の色」です。この小説も切なさはありますが、青春の爽やかさも感じる、いい短編小説です。

投稿: 次郎 | 2009/02/26 22:50

はい、純文学も好きです。
白黒つけてしまうか、永遠にグレーのままでいるか…。難しい選択ですね。
おそらく後者を描いた作品は少ないですよね。

辻邦生さんの作品、読んだ事がないです。
フランス文学者でもあるんですね。
「夏の海の色」読んでみますね。

投稿: *yuka* | 2009/02/26 23:07

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