八日目の蟬 / 角田光代
角田光代さんの、「八日目の蝉」を読んだ。
文庫になるまで待とうと思っていたのだけれど、今読まないといけないと思って、手にとった。
不倫相手の奥さんが生んだ子供を誘拐して逃げる主人公。
逃亡先で様々な人と出会い、やがて子供も成長し・・・という話。
「予定日はジミー・ペイジ」で描いた妊娠への戸惑いと芽生える赤ちゃんへの愛情、「空中庭園」で描いたバラバラな家族たちとそれが行き着いた先、それらを混ぜ合わせ、さらに大きな深みを加えたような話。
主人公が犯罪者で逃亡しなければいけないということや、被害者と加害者に関する考え方、子供の頃の記憶を振り返る場面があるところなど、どこか吉田修一の「悪人」と通じる部分がある。
0章では主人公が赤ちゃんを誘拐する場面が描かれ、1章では主人公が赤ちゃんを連れて点々と逃亡し、2章では成長し大学生になったその赤ちゃんが主人公となり綴られる。
1章では、いつか主人公が捕まってしまうのではないかとはらはらさせられる。犯罪者のはずなのに主人公の肩を持ってしまうのは、主人公とその赤ちゃんとの絆が次第に深まり、本当の親子のようになっていたからだと思う。
2章からはところどころで涙がこぼれ、最後には泣いてしまった。
母親の愛情であり、憎しみであり、子供の傷であり、不器用に生きる人々の姿であり。
温かさと痛みがぐしゃぐしゃとない交ぜになり、辛い思いをして辿り着いたその先には、やはり愛された確かな記憶が根付いていて。
そういった一切合切を、きっと自分の中にある何かしらに結びつけて、胸がきゅーっとなって、泣けてしまうのだと思う。
また、この作品のいいところは、悪者をつくっていないところ。
不倫した父親も、育児をまともにできない母親も、誘拐をしてしまった主人公も、皆等しく、誘拐された子にとっての親であるという結論に達している。
不器用でも、時には方法を誤っていても、大人げなくても、皆その子のことを愛していたのだと。
この話を読んで、深い感銘を受け、泣ける自分であるということも、またとても恵まれたことなのかもしれない。
そう思えた話。
私が今まで読んだ角田さんの作品の中で、一番深くて、痛くて、愛に満ちている。
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