スカイ・クロラ / 森 博嗣
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僕はまだ子供で、ときどき、右手が人を殺す。その代わり、誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう。
私にとって、久々の森 博嗣作品。
だいぶ昔にS&Mシリーズを読んで以来。
これはミステリーではなく、戦闘機のパイロットカンナミ・ユーヒチを主人公にした話。
舞台は近未来。
彼は新しい配属先の上司である草薙水素のもとで、戦闘機「散香マークB」に乗り、戦っていく。
といっても普通の戦争ものではない。
ユーヒチの配備先のパイロットはたった4人で、現実世界から切り離されているようだし、戦闘シーンはどこか淡々としており血腥さが全くない。
一般市民にはまったく関係がないように見える、ショーのような戦争。
また、キルドレと呼ばれる彼らは一体何者なのかなどミステリアスな要素あり、詩的な美しい文章あり、生きる事死ぬ事への哲学的な問答あり。
戦闘機のパイロットとして常に死と隣り合わせで、生き続ける為には人を殺さなければいけない主人公。
彼の気持ちはまるでデッサンをしているかのように一線一線短い言葉で描写され、その沢山の線たちが彼の思考をぼんやりと形作っている。
戦闘機のパイロットとして人を殺し続けないといけない彼は、実際どこかぼんやりとした感覚で生きている。
小説だと下手したら陳腐になりがちな空中での戦闘シーンは目の前に映像が浮かぶ美しさで、戦闘機に全く詳しくない私でも楽しめた。
本作は、シリーズの中で初めに刊行されたものだが、時系列では最後になる。
この作品に行き着くまでの流れを知った時に、新たな発見をし、また違った見方ができるのだろうなと思うと面白い。
森 博嗣の文章の、あの無駄の無い潔さ。
短い言葉たちが紡いでいくその世界観。
好き嫌いが別れると思うけれど、私は好きだ。
読後には、透明感のある、美しく脆い遠い世界を覗いた気持ちになる。
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