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2008/07/20

なんくるない / よしもとばなな

Nankuru 「なんくるない
★★★
よしもとばなな

書籍の詳細情報はこちら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
沖縄をテーマに書かれた、4つの話で構成された本。

どの話も、はっきりいって文章が拙い。
文学的に美しい文章とは反対に位置するような、素人が気付いたことをぽつぽつ書き留めたような不器用さを感じる。

でも、この小説はその拙くて不器用な中に、人とは、魂とは、というような、大切で根本的なことに対する気付きが沢山散りばめられていて、美しい。
文章が拙い事が等身大に感じられ、生きて行く事そのものの力が見えてくる。
それにしてもこの拙さって狙い?個性?
よしもとさんの作品を読んだのが久々だったのだけれど、昔からこういう拙い文章を書く人だったのだっけ・・・。
でも、拙くても、彼女の感性っていいよなって思う。

ちんぬくじゅうしい
母親が宗教にはまってしまったことをきっかけに、沖縄に住むおばさんのところにお世話になることになった少女の話。
当たり前に手元にあったものがいつか遠くなってしまうこと、逆に遠かったものがまた戻ってくる事。世の中はその繰り返しでできていて、いつまでも近くにあるはずだったものが手の届かないところにいってしまうことの切なさを感じた。

足てびち
よしもとさんの半エッセイ。
沖縄に住む夫婦とのゆったりとした思い出の話。
ストーリー自体ははっとするようなものはないのだけれど、最後に語られていることが読んでいる時の状況にシンクロしてすごく心に残った。

闇を見て、また光が降り注いで、思い出を抱いて……うんざりするほどくりかえして喜びも苦しみもまたどこかへ消えていくサイクルの中で、立ち止まることも許されない人生の、私たちは単なる奴隷だ。
なのにどうして、こんなにもいいものだと思えるのだろう。

私たちの日常って、本当に色々なことが起こって、絶えず変化して、喜んだり悲しんだりして。私たちの意志とは関係なく、勝手に流れていってしまう人生。たしかに考え方によっては奴隷なのかもしれない。
でも、やっぱり、そんな日々はすごく愛しいものだ。

なんくるない
離婚をした女性が姉の家に居候をし、やがて沖縄に旅行して新しい恋をする話。
4作品の中で一番長編。
主人公の女性が浮世離れしているタイプなので、作品全体がふわふわとしている。私もどちらかというとそういうタイプなので、一寸親近感がわく。

都会で正反対のタイプの夫と暮らし、離婚をして、自分の生き方がはっとわからなくなって…そんな彼女が沖縄で根本的なことにたくさん気付いていく、思い出していく。
読んでいると、疲れた都会人たちは間違いなく沖縄に行きたくなると思う。

この作品は、たくさんのいい言葉、いい気付きがでてくる。

わかってもらえるということはただそれだけで、もう「今寝てもいいよ」っていうふうにふわふわに整えられたベッドを用意してもらっているのと同じくらいに、ほっとさせられるものだ。

自分の最大の理解者だったはずの夫とわかりあえない主人公のことを、姉はわかってくれている。そのことに対するこの気持ちに、私も共感する。
家族でも友人でも、本当の自分をわかってくれている人の存在って大きいよなって思った。
逆に、たとえそれが夫婦であろうと家族であろうと、自分のことをわかってくれていない人というのはいて、どんなに近しい関係でもただ一緒にいるだけでいつか苦しくなってしまって、色々なところに歪みができてしまうものだと思う。

現代人はそういう歪みを抱えている人がきっと多い。
色々なことを我慢して、色々なことを見失って、毎日生きて行くだけで、仕事をこなしていくだけで精一杯になってしまっている人。
本当の自分とか、自分らしい生き方とか、そういうことをふっと考えさせられる話。

リッスン
唯一男性が主人公の話。
海辺で出会った少女との短い話で、そんなにひきつけられるところはなかったのだけれど、最後のフレーズだけがよかった。

明日の僕もそう思うだろう。
動いていく世界を聴き続けること以外は、何もできないと。

世界を聴くっていいよなぁ。
山田詠美的な表現。

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コメント

yuka,yukaの書評を見ると、いつもこの本を見たいなっていう感じが湧いてくる。
残念なことに、中国では買えないんです。。。
何か本を見える日本語ホームーページを教えてくれますか?

投稿: シコウ | 2008/07/21 15:00

こんにちは。
そう言ってもらえると、書いた甲斐があったなぁととても嬉しいです。
いつも、
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「なんくるない」
★★★★☆
よしもとばなな

書籍の詳細情報はこちら
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↑こういうかんじで、書籍の詳細情報はこちらの「こちら」からamazon.co.jpへリンクをはっているのですが、amazon.co.jpってそちらでも利用できるのでしょうか?一応国外配送もやっているようなので。
amazon.cnになってしまうと日本語の本は扱っていないのですかね?
もしamazon.co.jpの利用が無理そうだったら、他に日本の本を買える場所がないか探してみるので言ってくださいね〜。

あと、下記ページ参考になるかもしれません。
http://www.h2.dion.ne.jp/~oga/book.html

投稿: *yuka* | 2008/07/21 15:36

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