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2008/03/19

やさしいため息 / 青山七恵

  「やさしいため息
★★★☆ 
青山七恵

芥川賞受賞第一作

文藝2008年春号

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

前作、「ひとり日和」では、やや酷評をした青山さんの、受賞後第一作。

ひとり暮らしをする主人公まどかのもとに、行方不明になっていた弟風太が突然転がりこんでくる。
風太は他人の日常をノートに書き付けるという変な趣味があり、まどかにも一日あったことを話させてその内容をノートに綴る。
会社に仲のいい人もおらず毎日何も無い日々を過ごしているまどかは、嘘を織り交ぜて話すのだけれど、それでもノートに綴られているのは平坦な日々。
だが風太の友人、緑くんと出会ってからまどかに少し変化が訪れるが・・・という話。

以下内容にふれていきます。

読んでいて思ったのは、やはり青山さんは文章がうまいということ。
描写力、表現力には着実な力がある。
以下、いいなと思った表現をふたつ抜粋。

マグカップから、オレンジ色の液体が喉をとおり、胸とお腹の境目くらいに流れ着く。上半身を揺らしてみると、そのあたりのなまぬるいところを内側から冷たいものがさわっていく。冷たいものはわたしのなまぬるさを含んで、だんだん消えてなくなって、もうお腹の中が少し重い感じがするだけで、わたしはジュースのことなど忘れてしまったように、もう次の行動を始めている。

狭い浴室に響くお湯の音は、どこかにつながるトンネルを掘る音のようにも聞こえる。

どちらも、言われればはっきりと想像出来る感覚で、はっとさせられる。

でも、彼女の描く主人公ってどうも私が好きになれないタイプばかりだ。
今回の主人公は弟がせっかくつくってくれた夕飯を

白いご飯のほかに数品の野菜料理と魚料理が、犬のえさのように、丸い器にきちんとラップされて、テーブルの上に並んでいる。

などと表現する。
いやいやいや、せっかく弟がつくった料理を犬のえさって表現するセンスがよくわからない。

彼女は会社に仲がいい人がおらず、休日に会う友人もおらず、でも見栄をはりたいが為に弟に会社の同僚と昼食を食べただの、学生時代の友人と週末に会うだのいちいち嘘をつく。
誰しも、多少の見栄をはりたい部分ってあるのかもしれないけれど、それにしても毎日嘘をすらすら話せることが驚きだ。
会社の人間関係がうまくいかず、毎日同じ事の繰り返しに疑問を感じる・・・という話の筋だけをおえばよくあるタイプの話なのに、主人公が卑屈すぎて少し疲れる。

主人公は緑君の家に遊びに行った時に、成り行きで寝てしまう。

亀を見ているはずが、別にいい、別にいい、と思っているうちにそんなことになってしまった。
終わってすぐ、緑君は寝てしまったけれども、わたしは眠れなかった。

ここの部分、説明を端折り過ぎていて、一瞬何があったのかよくわからなかった。
生々しくする必要はないけれど、もっとちゃんと書くべきでは。
「そんなこと」ってどんなことよ・・・。
そして、なんでいじけてばかりの主人公が付き合ってもいない男性と軽々しく寝てしまうのかよくわからない。
主人公は緑君に恋をするのだけれど、緑君の魅力が全然伝わってこないので、主人公が彼を好きになった理由もわからない。

すごくいい表現ができる一方で、どうも人物への味付けが陳腐な感じが残念。
もう少し、好きになれるタイプの主人公で話を書いてくれたらなと思う。嫌な感じにひねくれている人ばかりなんだもの・・・。
あと、恋愛の部分も、もう少し濃く、相手の男性を魅力的に書いてくれたらな。
それらの部分は、今までの3作全てに感じること。それが彼女の持ち味なら、私の好みに合わない作家さんってことかしら。

そういえば、主人公のところに弟が突然転がり込んで来て、主人公の為に毎日料理をつくるだとか、主人公は弟の友人と寝てしまう、という話は、角田さんの「まどろむ夜のUFO」によく似ている。あっちのほうが私は好き。

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