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2007/09/19

最後の息子 / 吉田 修一

51jqdm52vjl_aa240_「最後の息子」
★★★★★
吉田 修一
第84回文学界新人賞受賞作

書籍の詳細情報はこちら
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もし、自分の好きな小説ベストテンをつくるとしたら、絶対にいれる作品。

新宿でゲイバーをやっているオカマの閻魔ちゃんと同棲する、いわゆるヒモの主人公「ぼく」
小説全体は、主人公や閻魔ちゃんが撮影したビデオの映像を主人公が観返し、解説をいれる形で進んで行く。

安物のビデオで撮影したざらっとした質感とぶれ、無意味にも思える一寸した映像や声による記録。
それは灯りを消した部屋の中で煌々と蒼白い光を放つテレビのような、どこか不穏な空気を孕んでいる。
その不穏さを映像として見せられている、そんな感じ。
その一つ一つのエピソードがコラージュの素材になり、パズルのピースになり、かっちりとはまっていく。

閻魔ちゃんは時には少女のように純粋で、時には妻のように甲斐甲斐しく、時には母親のように愛情深い。その一方でオカマならではの発想を持っている。
この小説の一番の魅力は、閻魔ちゃんのキャラクターにあると思う。

「青年というからには、野心とか野望とか、そういった血腥いものが必要なのよ!分かるかしら?」
「・・・・・・」
「分かるかしら?」
「だっていつもは、暴力反対! 暴力追放! って言ってるくせに・・・・・・」
「そりゃそうよ。暴力は反対よ。でもね、正義のためにふるう暴力だけは必要なのよ」
「矛盾してるよ」
「あら、矛盾してるから、オカマなのよ」

閻魔ちゃんらしいこういう発言が、私はたまらなく好きだ。
そして、「ぼく」と閻魔ちゃんとのやり取りに漂う、どこかインテリな空気も好き。

この小説は、ただのゲイカップルの恋愛話には終始しない。
「ぼく」の学生時代の話、両親との話、元彼女との話、ゲイバーにくる客の話、殺された友人の話・・・それらが複雑に絡み合って、それぞれの人物を丁寧に描き出している。

ただ単に細かいエピソードを紡ぎ合わせて、何となくはじまって何となく終わるという最近よく見るタイプの小説ではなく、細かく練られたであろうプロット、伏線、最後のオチ、それら全てが気持ちが良いくらいよく出来ている。

何でこれで芥川賞をとれなかったのか心底疑問。
昨今の芥川賞受賞作よりよっぽどレベルが高いと思う。

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コメント

mintdropが中庭は模索するつもりだった。

投稿: BlogPetのmintdrop | 2007/09/25 14:35

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