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2007/09/17

オアシス / 生田 紗代

412y771hs3l_aa240_「オアシス」

生田 紗代
第40回文藝賞受賞作

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主人公メー子は、ある日大事にしていた青い自転車を盗まれてしまう。
自転車を必死に探すこと。
自転車との思い出。
突然家事を放棄してしまった母親との確執。
気の合う姉サキちゃんや和美叔父さんとの楽しい会話。
コンビニでの気楽なバイト。
そういった毎日の何でもない事や小さな事件がぽつぽつと語られていく静かな話。

毎日毎日、具合が悪いと言ってはだらだら寝て、起きて娘がつくったご飯を食べて、偉そうに娘に説教をする。
娘2人に「粗大ゴミ」というあだ名までつけられてしまった母親のことを疎ましく思う一方で、邪険にも出来ずに所望された豚汁をつくってあげてしまう。そんな「腹がたつんだけど、心の奥底では愛しい」という、家族間の確執がうまく描けていると思う。

母の親指の爪はとても面積が広くて、そのざらざらとした手触りが、幼い私は大好きだった。昔はよく布団の中で、一生懸命母の親指の爪を触った。ちっとも滑らかじゃなくて、でこぼこしているその爪は、魔法のランプみたいに、擦るだけで私を眠りに誘い込んだ。
時々、まだ母の手にあの爪が存在しているのか、確かめたくなる。

このエピソード好き。
本当は昔の甘えることができた母親が好きで、それが恋しい気持ちと今の母親への幻滅がぐしゃぐしゃと混ざり合って苛立になっているのだと思う。
でも、昔の母親とのエピソードがこれだけで一寸物足りない。
母親としての役目を果たしていた頃の姿をもっと読者にみせることで、より話に深みがだせたのではないかと思う。

主人公が何故青い自転車に固執するのか。
その理由が明かされた時に、青い自転車でサイクリングをしていた描写が何度も出て来る意味に気付く。
うまいと思う。

そういえば、食べ物の出し方はとてもよく、チーズリゾットと鶏肉の鍋を食べたくなった。
美味しそうな食べ物を登場させる作家さんは、基本的に好きです。
それともそれは、私がお腹をすかせていたせい?

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