« 2007年6月 | トップページ | 2007年8月 »

2007年7月

2007/07/29

夕暮れと手紙 / ブルーハーツ

Img_1587_1夕暮れの真っ赤な太陽。
実物はもっともっと濃い赤で。
静かに丸く燃える陽は一寸寂しそう。

普段橙色をしていることが多い太陽が
見た瞬間
「赤!!」
と思う色をしていると
目が釘付けになる。

ああ、赤いなぁ、燃えているな。
そう思いながらしばし眺めてしまう。
でも、こんな時の太陽は、結構寿命が短く
目を離した隙に沈んでしまっていたりする。

夕暮れといえば、ブルーハーツで好きな曲があって。
その歌詞を掲載。


**********************

「夕暮れ」 
作詞・作曲:甲本 ヒロト

はっきりさせなくてもいい あやふやなまんまでいい
僕達はなんとなく幸せになるんだ

何年たってもいい 遠く離れてもいい
独りぼっちじゃないぜウインクするぜ

夕暮れが僕のドアをノックする頃に
あなたを「ギュッ」と抱きたくなってる

幻なんかじゃない 人生は夢じゃない
僕達ははっきりと生きているんだ

夕焼け空は赤い 炎のように赤い
この星の半分を真っ赤に染めた

それよりももっと赤い血が
体じゅうをながれてるんだぜ


**********************

柔らかくてあたたかいのだけど、力強くもある。
色々な意味で優しい歌。

この歌のイメージとは正反対なんだけど
やっぱり同じようにじーんときて「いいなぁ」と思う曲は「手紙」


**********************

「手紙」
作詞・作曲:真島 昌利 

ヴァージニア・ウルフのメノウのボタン
セロファンのバスのシートに揺れている 

ジャングルジムの上 ひろがる海に
ぬれている君と 淡い月明かり 

ねじれた夜に 鈴をつければ
月に雪が降る 

水平線の見える場所は もう春だ 

背骨で聴いている ハチミツの雨
ヒマワリ畑で ラジオが歌うよ 

手紙を書いたなら 空に飛ばすんだ
風が運ぶだろう 君のところまで 

青空の下 怪獣退治
ギターを片手に 

輝いている夜明け前は もう夏だ 

ろうせきの道 走り抜けてく
ギターを片手に 

輝いている夜明け前は もう夏だ
**********************

美しい透明の碧さの中に、凛とした強さをもった歌。

これから一日を終える歌と、これから一日が始まる歌。
漠然とした不安の渦に巻き込まれそうで心がぐにゃぐにゃになっていても、静かな正しい状態に戻せる歌たち。
どちらも好きです。
ちなみに両曲ともアルバム「DUG OUT」に収録されているので、気になる方は是非。

31dh0j8xk1l_aa190_
DUG OUT
THE BLUE HEARTS

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/07/26

天野可淡さんの本復刊

トレヴィルの解散により入手困難となり、もう10年近く昔から「復刊」を希望されていた、天野可淡さんの本。
ようやく復刊。特別仕様限定版の作成も決定!

私はトレヴィル時代のものを持っているので、「《特別仕様限定版》KATAN BOX」を予約。
こちらで予約可能。

関連記事:
KATAN DOLL/天野可淡
KATAN DOLL/KATAN DOLL fantasm/天野可淡

683088891spe_1そういえば、同じように復刊した「骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書 ハンス・ベルメール」を以前買ったのに、買っていないかと思ってうっかり再度買いそうになりました。。。

上の空で何かをやることが多い私は、同じ本を二回買ったことがあるし、よくなくし物をする。

最近、豚肉のお店でサービスでくれた豚の手帳が見当たらない。
どこだ〜豚〜と思ってみるものの、見あたらないので適当なメモ帳に予定を書き込んでみる。
でもこのメモ帳もまたどこかへ消えてしまうとも限らない。

神様は私に「片付ける」という才能を授けてくれなかったのね・・・。

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ラーメン「青葉」(西荻窪)

Img_1505

西荻にできた、青葉の新味。
メニューは
・中華そば(700円)
・つけめん(750円)
・特製中華そば(900円)
・特製つけめん(950円)

普通の中華そばと、特製の違いは具の多さ。
とりあえず「中華そば」を食べた。

スープは豚骨ではなく、魚介の香りがするあっさり味。
でもコラーゲンが多く含まれている為、とろんとしている。
麺はむっちりとした中太ストレート。
だいたい、あっさりめの中華そばって細目の縮れ麺という組み合わせが多いので(そうじゃないとスープがからまない)この組み合わせは新鮮。

その太めの麺ととろみのあるスープの組み合わせで、何とも言えない面白い食感。
もちつるもちつるってかんじ。
食感が面白くてするする食べていたけれど、薄めの味のせいで途中で食べ飽きてしまった。

コラーゲンのせいで、食べた後唇がぺったりする。
脂っこい料理を食べたみたいで、これはちょっと不快。
リピはしないなぁと思っていたものの、今こうして書いていると「あの食感をまた味わってもいいかも」とも思ってきた。
新しいことは新しいので、一度食べてみるのをおすすめ。
次はつけ麺かな。

---

その後再訪。
そしたら、味が変わっていた。

あの、べたべたとまつわりつくコラーゲンがすっかりなりを潜めてしまっている。
よくいえば「万人受けする味」に、悪く言えば「個性のない味」になってしまった。
まだまだ、味を試行錯誤中なのかな?
もしかしたら、また変わっているかもしれない。

個人的にはあのぺたぺたコラーゲンのままのほうが個性があっていいのでは?と思う。
あのぺたぺたコラーゲンのまま、途中で味に飽きないように味を変えられるものを添えるとか、何か工夫するといいんじゃないだろか。
あとは、油でぺたぺたすると誤解している人もいるようなので、コラーゲンだっていうのをもっとアピールするとかね。

=============================
青葉 西荻窪店
TEL:03-3397-0975
住所:杉並区西荻北2丁目11番7号 
営業時間:11:00〜売り切れまで
=============================

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007/07/23

カツラ美容室別室 / 山崎ナオコーラ

カツラ美容室別室

山崎ナオコーラ
文藝2007秋号掲載
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高円寺にあるアパートで一人暮らしをする淳之介。
風来坊の梅田さんに連れられて行ったのは「桂美容室別室」
店長、桂孝蔵はカツラをかぶっている。
そこで働くエリと仲良くなった淳之介は・・・という話。
以下内容にふれていきます。

以前、「浮き世でランチ」の書評でも言っていたように、私は山崎ナオコーラさんの作品って結構好き。山崎さんの小説は、ところどころ「うまい」と思わせる表現があるからだ。


段ボールの断面に出来ている穴の、ひとつひとつに寂しさが詰まっているのが見える。夜中に、細長い虫のような寂しさが、その穴からニョロリと出てきそうだ。

上記は、引っ越ししたばかりの淳之介の気持ちをうまく表現していると思う。

オレが仕事をしていても、部屋でだらだらしていても、この地球のどこかにエリという人が存在しているということが、変。髪を切っているのか、本を読んでいるのか、友達と一緒か、眠っているのか。わからない。でも確実に何かをしている。どこかに、いる。触れないが、温かいはず。人間だから、一秒も休まず、生体として活動を続けている。変だ。

相手が不在でも、生きてどこかで何かをしているという感覚って気にしてみると不思議なもので。
そういう感覚に気付かされて面白い。

疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい。

エリの愚痴をきかされてうんざりしている淳之介の気持ち。そうなんだよね、疲れる人と一緒にいるくらいなら一人で好きな飲み物のんでいるほうがよっぽどほっとするよね・・・と思う。

その他にも、淳之介がエリに対して持っている淡い好意が、エリが他の男といるところを見た途端に変質する様子とか、兄だと知って嫉妬が氷解するところとか、カツラさんに対して失礼なことを言っちゃったからとメールで謝った後に謝ったこと自体が嫌になってしまったりとか、エリに対する気持ちの変化だとか・・・ああ、なんかわかるわかるという場面がいくつもある。

結末はちょっと納得がいかなかったけれど。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/07/22

まぶた / 小川 洋子

51vdp35yprl_aa240_「まぶた」
★★★★★
小川 洋子

書籍の詳細情報はこちら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まばたきの一瞬に見え隠れするような、どこか不思議な8つの短編集。

飛行機で眠るのは難しい
「飛行機で眠るのは難しい。そう思いませんか、お嬢さん?」
飛行機で隣の席になった男に話しかけられるところからはじまる話。
「飛行機で気持ちよくなんか眠れない」という主人公に、彼は「その人固有の眠りの物語」があると言う。
彼は主人公に、何かに触れるとその品物もまた小さく見えてしまうという不思議な老女とのエピーソードを話してきかせる・・・。
夜の飛行機のしんとした情景と相俟って進む静かな老女の物語が胸を打つ話。
書き出しが秀逸。

私自身、そんなに眠くないけれど眠らなきゃっていう時はこつがある。
自分の頭の中で物語を創作したり、脳波を眠りの方向に持って行ったり。
人ぞれぞれ、そういうこつって持っているのだろうな。

中国野菜の育て方
野菜売りのお婆さんからもらった、中国野菜の種。
夜になると光るその不思議な植物と、どこに行ったかわからないお婆さん。
ぼんやり光る植物の美しさが深く印象に残る話。
お婆さんを訪ねて行ったパン工場裏でおじさんにもらった出来立てのジャムパンが何とも美味しそう。

まぶた
海辺の町に住む15歳の主人公は中年男Nと恋をして島にある彼の家へ通う。2人の様子をじっと見守るハムスターにはまぶたがない。病気でまぶたを切り取ってしまったというのだ。
その一方で、主人公のまぶたに執着するN。
ホテル・アイリス」の焼き直しともいえる話で、一寸物足りなかった。
ホテル・アイリスでは、翻訳家の甥は病気で舌を切り取ってしまっていた。言葉を司る舌と、眠りを司るまぶた。それぞれの欠損に込められた意味を考えてしまう。そして、双方とも本当に病気でなくなったものなのだろうかという疑問が残る。

お料理教室
主人公が訪ねた「キャセロール料理教室」
先生一人、生徒一人なのに、お料理の手順を何も教えてくれずに全て自分でやってしまう困った先生と、何も言い出せない主人公という居心地の悪さの描写がうまい。
ハウスクリーニングの業者によって清掃された配水管から次々と流れて来る生ゴミたちが気持ち悪い。
やっぱり小川さんの描く「食卓」って、食欲が失せるようなものが多いと思う。

匂いの収集
この世のあらゆる匂いを収集することが好きな彼女をもった主人公の話。薬指の標本的な舞台。
唯一、いまいちだなぁと思った短編。
この結末なら、「匂いの収集家」である必要はなかったのでは?と思う。

バックストローク
水泳の才能をもった弟と、それを応援する為だけに生きる母、それを見守る主人公の話。
母親が庭にプールをつくった後、弟の身体に異変が起こる。左腕が上がったまま動かなくなってしまったのだ。
それをきっかけに精神的におかしくなっていく母、アルコール浸りになる父、責任を感じる弟・・・家族がバラバラになってしまう。庭のプールから水がなくなった時、それが石の棺に変わってしまうことを皆何となくわかっている。
実際、何らかの才能があって、それに親なり誰かなりが寄りかかってつぶされそうになっている人って結構いるのでしょうね。その人の為にってつくられた何かは、その人をそこに縛り付けるためのものでしかなかったりして。恐ろしい。

詩人の卵巣
睡眠薬を断つ為の一人旅の話。
雨宿りついでに寄った詩人の記念館。
そこで手に入れたのは、彼女のまぶたの向こうに広がる眠りの物語だったという話。
一人で、旅先で目的もなくふらふら〜な感じが良い。
人はそれぞれ眠りの召使いを持っているという話で、「飛行機で眠るのは難しい」とリンクする。

リンデンバウム通りの双子
主人公が仕事の関係で知り合った双子の老人ハインツとカール。
2人が辿って来た歴史と老い、兄弟愛の中に主人公は大切なものを見つけ、娘の元へ急ぐ。
雨の日に澄んだ音色でゆっくりと鳴り止んで行くオルゴールのような話。

応援のクリックおねがいします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/07/21

風抜き穴の花

Img_1503ブロック塀の風抜き穴から顔を出す黄色い花。
その生命力がなのか、その佇まいがなのか。
あ、美しい と思った。

例えば、普段踏みしめているアスファルトの下にも、本当は土があって植物が生きていることは忘れがち。
アスファルトのすき間から顔をだす草を目にして、「いたんだなぁ」って気付く。
私たちって、一体どれくらいの植物に蓋をしてしまっているんだろう。

植物の真っ直ぐさ。
そういうところに、案外答えがあるのだと思う。

応援のクリックお願いします

| | コメント (0)

2007/07/18

ちくちく和裁

今、着付け教室で和裁をやっている。
さらしを買ってきて、4枚に切って、手縫いで夏用の下着作り。
浴衣で着るのにちょうどいいようにってつくっているのだけど、つまり肌襦袢のようなもの?
半襟をつけてもいいそうなので、襟選びも楽しみ。

手縫いで、ちくちくちくちく縫っている時の無心なかんじがすごく気持ちがいい。
「あ〜、私こういうの好き〜!!」って思った。
暇つぶしで黙々とペンを走らせて絵を描いている時の感覚と似ているかも。
手が気持ちいい、頭が活性化する、みたいな。
脳内でなんかでているんじゃないのかなぁ。
ランナーズハイのような、何か・・・。

初和裁なのに、先生が縫い方がうまいと褒めてくれた。
うふふ、ちょっと裁縫にも目覚めちゃおうかしら。

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/07/16

沖縄の猫

1_2

沖縄に行っていました。
行く前にブログに行って来ますとでも書いておこうかと思ったのに、ココログメンテナンス中でした・・・。
そんなわけで久々の更新。

沖縄と言っても、本島から遠く離れた八重山にある黒島にずっと滞在していたので、台風の被害にはあわず。
そして、那覇に渡った頃には台風は過ぎ去っていました。
さらに、東京に戻った頃にも台風は過ぎ去っていました。
なんだか台風を避けたような旅行。

写真は、壷屋焼きの工房やお店が連なる那覇のやちむん通りで見かけた、シーサーの横で寝そべる猫。
沖縄の猫って、なんかとても細くて頭の小さい小柄な子が多いんですよね。
気候と関係があるのかしら・・・?

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/07/09

ストロベリーショートケイクス

「ストロベリーショートケイクス」
2006年
監督: 矢崎仁司
原作:魚喃キリコ
出演:池脇千鶴、中越典子、中村優子、岩瀬塔子

HP
★★★★☆
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
29cinemastrawberry魚喃キリコのコミック『strawberry shortcakes』を映画化したもの。
4人の女性がそれぞれ苦しみ、もがき、強く生きる物語。
私は原作がとても好きなので、映画評と言うよりも主に原作との比較にしてみた。
以下内容にふれていきます。

★里子(池脇千鶴)「恋したいなあ‥」
里子は原作から一番設定を変えられたキャラだ。
原作ではレンタルビデオ店か何かで普通にアルバイトしているのだけれど、映画では過去に大失恋を背負っていて、今はデリヘル店の電話番。一番下っ端というかんじで、デリヘル嬢たちにそれなりに気を使っている。また、老齢の母親が一人いて、その老人ホームのお手伝いもしたりする。
原作の里子は、恋に恋しながらも一人でいられるどこか冷めた女性で、告白して来る男をすぱっとふってしまったりもするし、後輩の恋の悩みを聞く姉御的一面もある。そんな里子の凛としたところとか、豪快なところが面白くて好きだった。
映画の里子はにこにこ元気な子で、どこか垢抜けない未成年って感じ。また、姉御というよりは妹って感じだ。
それなのに、部分部分原作の里子のエピソードが挟まれるのでなんだか違和感。
池脇千鶴だと雰囲気が幼すぎたのでは・・・。
原作と切り離してみれば、いいキャラなんだけどね。

★秋代(中村優子)「‥楽しいって、大切なことですか?」
原作ほぼそのままの設定の秋代。デリヘルの一番人気でありながら、専門で一緒だった菊地に片思いをしている。
映画だけの特徴は、棺桶で寝起きしているところ(笑
惚けたら自殺すると言っている秋代らしくて、強引だけど面白い。
ちょっと違和感があったのは、電話で菊地を呼び出すシーン。
原作で「おいーっス」と呼びかける秋代は、精一杯男っぽく話していると思うのだけど、映画の秋代はなんか普通。もっと気張ってもよかったのではないかなぁ・・・。だって、秋代が男っぽく演じる事で「私はあなたに恋愛感情なんてないですよ、男同士のような気楽な友達ですよ」とアピールする大切な場面だと思うのだ。
あとは、お客に「チェンジしますか?」と言う時の秋代が、なんか媚びたような甘えた声をだしていて嫌だった。峰不二子的なフェロモンがあって欲しかったなぁ。媚びるだけでなく自信もあって、男が勝手に寄って来るっていうかんじの。スタイルはさすがによかったのだけど、なんかそういう意味での色気が足りない。
で・・・菊地が安藤政信なのは、ミスキャストではないだろか・・・。原作だと一重でクールな顔立ちで長めの髪の毛が柔らかそうな菊地がよかったんだけれど、スポーツ刈り?みたいな安藤政信が正直田舎臭くてガテン系で・・・秋代の気持ちがわからなかった。
秋代と菊地がセックスをするシーンも、なんか菊地はりきり過ぎだし・・・色々やり過ぎで原作の菊地のキャラとだいぶずれてしまっている。私は魚喃さんが描くあの目が一重のクールな男の子像が好きなので、がっかり。

★ちひろ(中越典子)「あたしにとっては、彼氏が神様かな」
ちひろは原作と映画の設定に殆ど差はない。結婚願望の強いごく普通のOL。
有名なイラストレーターとして仕事をする塔子を羨ましく思っている。
映画の方がより甲斐甲斐しい感じかな。男が脱ぎ散らかした服をさっと畳んであげたりするし。へ〜こんなことする女の子いるんだぁと思ってしまった。
原作のちひろは嫌な女と思ったのだけど、映画のちひろは中越典子さんの好演で憎めなかった。多分、原作ではちひろの意地悪さとあざとさが目立ったのだけど、中越典子さんの演技ではちひろなりにひたむきで一生懸命なところが伝わってきたからだと思う。
男が全てで、占いに頼り、一人で時間を過ごせず趣味も無い人生ってなんかすんごくつまらなそうなんだけど、実際そういう人って結構いるのかしら。
それにしても、ちひろの恋人永井もかっこよくなかった・・・。

★塔子(岩瀬塔子)「あたしを‥馬鹿にするなよ」
塔子も原作とほぼ一緒。ちひろと同居していて、名のあるイラストレーターで、恋愛と仕事のストレスから過食嘔吐を繰り返している。
役名と名前が一緒だし、ピアスのあき方なんかも魚喃さんの漫画の登場人物っぽい・・・と思ったら、魚喃キリコさんご本人だそう!
原作でも、おそらく自分自身を投影して描いたのが塔子なのだろうなと思っていたので、本人が演じるって面白い。過食嘔吐の場面もやたらリアルだったし。
ただ、原作で持った塔子のイメージと一寸違った。でも、作者自身なので映画のイメージは正しいはず。
おそらく、魚喃さんの絵柄と雰囲気で生々しさが淡々とした空気に変わっているせいでしょうね。
ただ、一仕事のあと上半身裸で寝るのは何故だ・・・腹冷えるから何か着なさい。
そして、痩せすぎているせいか一番最後の嘔吐シーンが幽霊のように見えて怖かった。

★それぞれの結末
結末は、ちひろが実家に帰るという部分以外は全て映画オリジナル。
原作では新幹線のホームで離ればなれになった塔子とちひろ。
映画では扉が閉まったせいで塔子も一緒に行く事になり、2人海辺でちひろの誕生日祝いのショートケーキに齧り付く。2人一緒のラストは原作よりも救いが大きくて好きだ。そしてこの、海辺て手づかみでショートケーキというのがたまらなく美味しそうだった。辛い辛いことを乗り越えた後の、かわいくてもろい甘いもの。
まぁ、タイトルをここで持って来たなという強引さもやや感じたけれど。逆に原作はショートケーキ自体は出てこなくて、女性たちを苺のショートケーキに例えた一冊。

妊娠をして田舎にマンションを買って引っ越した秋代。
お腹の子は菊地の子か定かじゃないけれど、きっと菊地の子と信じて育てていくのだろうな。
なんか一寸切ない。

4人を海岸で引き合わせ、さらになくされたはずの塔子の絵を里子が持って来ていると言うオチなのだけれど、なんか強引に4人を集めちゃった感じがしなくもない・・・。
4人の繋がりはもうちょっとさり気なくのほうがよかったなぁ。

結局、私の中では映画は原作を越えられなかった印象。
でもきっと、原作を知らずに観たらもっといい映画って思っていただろうなぁと思う。

そうそう、公式HP「いちごレポート」では、自分が4人のうちどのタイプかという診断ができる。
ちなみに私は塔子でした。
-------------------------------
塔子タイプのあなたは。。。
何事もそつなくこなし、天性の才能に恵まれている優等生タイプ。しかし、プライドが高いことが災いして、感情をうまく伝えることができない不器用な面も持ち合わせている。
-------------------------------
あなたは誰タイプですか?

応援のクリックお願いします

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2007/07/08

時をかける少女

「時をかける少女」
2006年
監督: 細田守
声優:仲里依紗 、石田卓也 、板倉光隆 、原沙知絵

HP
★★★★☆
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Kaba24023高校2年生の紺野真琴は、同級生の間宮千昭と津田功介と野球をしたりして3人仲良く過ごしている。
真琴はある日、理科実験室で奇妙な胡桃とぶつかり不思議な体験をする。その後、自転車のブレーキの故障で電車に衝突しそうになった時に時間を跳躍して事故の前に戻ってしまう。
叔母の芳山和子に言われて「タイムリープ」の力を手に入れたと知った真琴は、美味しい物を食べる為、楽しい事を何度もする為、失敗を無かった事にする為、・・・と些細な事にタイムリープの力を使い続ける。
ある日、千昭から予想外の告白を受けた真琴は、いつまでも3人で仲良く過ごしたいと「タイムリープ」を使い、告白をなかったことにしてしまう。そこから段々、3人の関係に変化が訪れ、タイムリープで変えた過去のせいで問題が起こっていく・・・といった話。
以下、内容にふれていきます。

私は原作を読んだ事もなければ、実写版も見た事がないのだけど、原作及び実写版の主人公「芳山和子」が、今回のアニメ版の主人公の叔母にあたる。映画版は原作の約20年後を舞台にした続編であるらしい。
自身もタイムリープの経験があったからなのか、和子は真琴に「タイムリープは真琴くらいの歳の子にはよくあることよ」なんてさらっと言ってしまう。真琴はそんな彼女のことを「魔女叔母さん」と呼ぶ。

この映画は、真琴のパワーに引っ張られて、勢い良く展開していく。
タイムリープをする時に、真琴は勢いよく走り、どこかに激突する。
遅刻も失敗もなかったことにして、いいことは何度も味わって、まさに人生薔薇色の真琴。
まぁ、プリンくらいもう一回買ってもらえよと思わなくもないが・・・。
ただし、真琴が過去を変える度に、そのとばっちりは周囲にいく。
真琴が失敗するはずだった調理実習では他の男の子が失敗し、それが原因でいじめに発展してしまう。
魔女叔母さんが言うように、真琴の代わりに誰かが不幸な目に遭っているのだ。

真琴は思いがけず千昭に告白されてしまう。
千昭に告白されたことをタイムリープでなかったことにして、ついつい千昭を避けてしまう真琴。
そんな時、友人の友梨に千昭をとられて気付く千昭への恋心。ちょっとベタな少女漫画的展開とはいえ、千昭が真琴ではなく友梨を見ているところ、友梨と話しているところを見た時の真琴の切なさが胸に染みる。千昭はきっと、真琴に冷たくされてしまったから告白してくれた友梨と付き合っちゃったんでしょうね。なんかこれ、青春だ・・・。意識しているから避けちゃうのに、嫌われているって思われちゃって、結局別の人と付き合われてしまう・・・結構世の中の中高生にある展開なのでは。

真琴の望み、男友達と3人でずっと・・・現実にはお互い彼氏や彼女ができたら壊れてしまう関係なんだけど、でも心地がいいから続く限りずっとそうしたいって思う気持ちもなんかわかる。

後で、告白をなかったことにした自分のひどさに胸を痛める真琴。
真剣な相手の気持ちに無理矢理蓋をしてしまったようなものだものね・・・。

和子叔母さんが真琴に言う言葉が印象的だ。

「待ち合わせに遅れた人がいたら、走って迎えに行くのがあなたでしょ?」

その言葉通り、最後のタイムリープを使って戻り、走って走って千昭の元に行く真琴。なかったことにしてしまった「告白」をきくために・・・。
タイムリープのことなんて知らないふりをして、真琴から千昭に告白してしまうという選択肢もあったはずだ。
真琴と両思いになったら千昭だって現代に残ることを選んだかもしれない。
でも真琴はタイムリープのことを知ったと正直に話してしまう。つまり、千昭との別れを選択してしまう。
真琴は、千昭にとって元の世界に戻ることが幸せなのだと決断したのだろう。
大切な人なのに、もう二度と会えない。
最後の夕暮れの土手の場面が切ない。

過去を変えてしまうことの残酷さ、その重さ、完璧な過去なんてつくれないこと・・・そして理想の未来は走って自分で勝ち取るもの、そういったことが伝わってくる映画。
何よりも青春のほろ苦さや切なさでじんわりくる。
いい映画でした。

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/07/05

第137回芥川賞候補作

第137回芥川賞候補作が決定しました。
下記6作品です。

円城 塔(えんじょうとう) 「オブ・ザ・ベースボール」(文學界六月号)

川上未映子(かわかみみえこ) 「わたくし率 イン 歯ー、または世界」(早稲田文学0)

柴崎友香(しばさきともか) 「主題歌」(群像六月号)

諏訪哲史(すわてつし) 「アサッテの人」(群像六月号)

前田司郎(まえだしろう) 「グレート生活アドベンチャー」(新潮五月号)

松井雪子(まついゆきこ) 「アウラ アウラ」(文學界三月号)

オブ・ザ・ベースボール」が・・・来てしまいました。
たしかに、今までに無かったタイプの、いわゆる個性がある小説だと思う。
でも・・・どうしようもなく退屈だった・・・。

今まで芥川賞を受賞した作品の中で、私がどうしようもなく退屈だったのはモブ・ノリオ の「介護入門」
YOとか朋輩(ニガー)とか、似非ラップっぽい中途半端な語り口に拒絶反応がでちゃって、最後まで読めなかった気がする。きちんと読んだらいい話なのかもしれないけれど、狙いすぎな語り口調が駄目。
選考委員の宮本輝氏は「ラップ調の若者の悪ぶった口調がこの小説におけるひとつの戦略である」と言うのだけれど。
まぁでも、私の好みに合わないってだけで、勿論好きだっていう人もいるわけで。

うーん、 「オブ・ザ・ベースボール」受賞しちゃうのかな・・・。
個人的には、そろそろ柴崎友香さんあたりに受賞して欲しいところ。
あと、川上未映子さんの作品の評判がいいようなので読んでみたい。
それにしても、川上未映子さんって、ブログを見る限り世界観とかビジュアルとか椎名林檎を意識している感じがする。まぁ、私は川上未映子さんのこと全然知らないので実際どうだかわからないのだけれど。歌手としてどの程度有名な人なんだろう。

選考日は7月17日。
誰が受賞するかしら。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007/07/04

UFOが飛んで、宇宙人との交換留学?

Sora_1

以前、旅先で私は変な飛行物体を見た。

遠くにある建物の真上。
その上にある、きらきら光る、銀色の玉。
その銀色の玉は、ふーっと垂直に上に飛び、ふーっと垂直に下に降り・・・きらきらと光りながら、バウンドするボールのように上下運動を繰り返していた。

「あれ、何かなぁ」

そう思って同行者に話しかけようとした時、その銀色の玉はものすごい速さで斜めに飛び、雲の中に消えていってしまった。

え、え、え。
あれは、もしや、 UFO!?
だって、人間がつくった乗り物だったら、あんな飛び方できない・・・。

人生唯一のUFO目撃経験。
ああ、UFOっているんだって思いました。

先日美容院でついてくれた、おしゃれないまどきな感じのアシスタントの男の子。
話していたら、彼は霊もUFOも見たことがあるそうで。
彼によると、秘密裏に地球と宇宙で交換留学が行われているらしく、地球で地球人のふりした宇宙人がこっそり生活しているそうな(笑
でもそしたら、交換で地球人も何処かに行っているってこと・・・?
不思議くんな彼の話、でも本当だったら夢があるな。
「UFOを見たことがあってね」っていう話を「今日の朝はパンを食べてね」ってくらい気軽に話すin美容院な日・・・。
ちなみに、私の周囲にはUFOを見たっていう人が全然いないのよね。

気になって調べたら、交換留学の件、彼が話していたことと同じかわからないけれどWikipediaに「プロジェクト・セルポ」として載っていた。事の真偽は定かじゃないけれどこういう話って面白い。

あ、ちなみにこの写真にはUFOは飛んでいなくて、これはただの夕焼け写真です・・・。 UFO目撃時は、写真なんていう発想が浮かぶ前に消えちゃいました。

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

つくりものの空

Img_1476先日、ここはタイかと思う程湿度が高く蒸し暑い日があった。
間違って池の外にでてしまって息苦しくて口をぱくぱくさせる金魚の気分。

空にうっすら膜がはったようで、何だかつくりものの空だった。
スクリーンに後ろから灯りをあてているみたい。
嘘っぽい、嘘っぽい、
そんなことを思いながら辿る家路。

そして、都会のど真ん中で蛇を見た。
長い長い、1m以上はあろうかという身体。
川沿いの柵のところを、しゅるしゅるしゅる。
たまにぽきんと垂直に身体を起こして、しばらくするとまたしゅるしゅるしゅる。

蛇、いるんだなぁ。
あのままどこに行ったのかしら。
そういえば先日読んだ「斜陽」で、蛇の卵を焼く場面が怖かった。

応援のクリックお願いします

| | コメント (0)

2007/07/02

中華「中国食酒坊 まつもと」(西荻窪)

西荻の北口にある、小さなお店「中国食酒坊 まつもと」

Img_1327

麻婆豆腐ランチ850円。
山椒がピリリとして美味しい。
上品だけどちゃんと辛い、絶品麻婆豆腐。
付け合わせの山クラゲも美味しい。

Img_1496

担々麺850円。ライスをつけてもらうことも可です。
細麺にからむスープは、辛いだけではなくちゃんと胡麻のこくがある。
スープには干し海老や搾菜が混ざっていて、完飲できる美味しさ。そう、塩辛くないんですよね。
ぴりっと辛いのにマイルド。

味良く、接客も丁寧で良いお店。

=============================
中国食酒坊 まつもと
TEL:03-3397-0539
住所:杉並区西荻北3-22-22
営業時間:11:30〜15:00、17:00〜24:00(L.O)
定休:火曜定休
=============================

応援のクリックお願いします

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/07/01

斜陽 / 太宰 治

Img_0001「斜陽」
★★★★★
太宰 治
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
古本屋で購入し、読もうと思ってページを捲ったら、タイトルの裏のページに書き込みがあった。

美紗ちゃんにこの本を贈ります。
太宰から人生の深さを読み取ってね。
私が一番スキな「斜陽」です。

Lovexx 里子 1994
※プライバシーに配慮して、名前は偽名です。また、文章は少し変えてあります。

・・・里子ちゃん・・・せっかくの贈り物は古本屋にありましたが・・・。
どういう経緯で美紗ちゃんはこの本を手放したのかしらとか、色々考えてしまった。
全く好みじゃなかった?
実は里子ちゃんが嫌いだった?
亡くなってしまった後に家族が売ってしまった?
とかとか。

しかもこの本は、発行所なんかが載っているページには、美紗ちゃんでも里子ちゃんでもない人の住所入りのスタンプ(年賀状とか手紙に押すようなやつ)があった。
こんなに書き込みがある古本自体初めてだけど、何人の手を渡って来たのか、みんなどんな風に読んだのか、考える機会になって面白かった。

そんな「斜陽」ですが・・・昭和20年、没落貴族となったかず子とその母、弟の直治、作家の上原の話である。


 朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
「あ」
 と幽かな叫び声をお挙げになった。
「髪の毛?」
 スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。
「いいえ」
 お母さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。ヒラリ、という形容は、お母さまの場合、決して誇張では無い。婦人雑誌などに出ているお食事のいただき方などとは、てんでまるで、違っていらっしゃる。

こんな美しく優雅な言葉で、始まる。
かず子の母親は冒頭のこの描写でわかるように生まれつき上品な人。周囲に最後の貴族と言われている。

父親を亡くしたかず子たちはやがて生活に困り、東京の家を売り払って伊豆へ引っ越して行く。
ここから、かず子たちは没落していく・・・という話。以下内容にふれていきます。

かず子は、伊豆でうっかり火の不始末からぼや騒ぎを起こしてしまう。
火事を起こすところだったという一大事に、また、自分のような人間がそんな失敗をしでかしてしまったという事の重さにかず子は大きなショックを受け、母親も悲しみ神経質になってしまう。貴族として世間知らずに育った2人の弱さや幼さを巧く表しているエピソードだと思う。優等生として育って来た人程失敗には脆く、自分のような人間が何故こんな失敗を・・・なんて打ちひしがれてしまうものなのだ。社会に出てみると、そういう出来事って自分であれ周囲の人であれ、どこかしらにあると思う。

かず子は昔一度だけ、弟直治の知り合いである作家の上原との間に「ひめごと」があった。
そのことをずっと心の中で特別なこととしていたかず子は、何年も時間が経ってから上原に思いを綴った手紙を送る。その手紙はかず子が勝手に上原も自分を特別な人と思っていると決めてかかっているような内容で、自分と結婚したがっている男の話をだして駆け引きしていたり、客観的に見てなかなか滑稽な手紙である。かず子は三通手紙を送るのだけれど、返事がこない理由を勝手に推測してそれをまた手紙に書いていたりもする。もし今の時代に、昔一度だけたまたまキスをした人からこんなに重たい手紙がきたら「ストーカー?」と呼ばれてもおかしくないような内容である。
でも、こういうことって今の時代でも違うかたちであるんじゃないだろうか。
例えば何でも無い事を勝手に特別な思い出にして相手もそうに違いないって思い込んでいる人とか、両思いって勘違いしている人とか、独りよがりのメールを送ったあげくに返事を強要するとか・・・。
時代も違うし太宰はかず子の手紙を滑稽なものとして書いたわけではないのだろうけれど、私は恋愛で思い込みの激しい人を見た気がしてなかなか面白かった。

母親が亡くなった後、かず子は恋にすがって生きることにする。
「戦闘、開始」と繰り返しつぶやくかず子がなんだかかわいい。
上原を追いかけて、東京の荻窪の自宅へ来たかず子。
上原は不在で、その妻と娘に会うのだけれど、これまた勝手に「いつかは私を敵と思って憎むのだろう」と大真面目に考えてしまうところが面白い。まだあなたと上原の関係自体スタートしていませんよ〜と突っ込みたくなる。
その後かず子は上原を探して、荻窪から阿佐ヶ谷へ行き、西荻の飲み屋でやっと再会する。
上原は、かず子の記憶の中のその人とはかけ離れ、見窄らしい男になっていた。

この上原と仲間が酒を飲む場面が妙にリアルである。「ギロチン、ギロチン、シュルシュルシュ」というかけ声にのりながら酒を飲み、インテリだとでもいうように時には議論もかわしたりするのだけれど、皆心のどこかで意味のないことをわかっているようでもある。でもそれでも、生きる支えとして繰り返し繰り返し飲み続けて誤摩化しながら過ごして行く。しかも、上原の家では電球も替えられないのに上原は飲み歩いているのである。
こういう人っているよな〜と思う。弱くて一人じゃ生きられなくて、だからといって一対一の真剣な友達付き合いもできず、ただ集団で群れて内輪で盛り上がって安心している人。家庭のことも満足に出来ないのに、外に居場所を求めて遊び歩く人。

かず子は複雑な思いを抱えながらも、上原とその夜結ばれてしまう。
でも、かず子は同情の末に本当の愛情を見たのかもしれない。

弟の直治はその朝自殺をしていた。
その直治からかず子への手紙が、本当に弱くて悲しくなってしまうような内容。
麻薬にはまり、酒で荒れ、強気な発言をしていた弟の内側の脆さ。
女遊びをしていても、本当に好きな人には思いを告げられない人。

かず子は、弟の死後に上原に手紙を送る。
この手紙が秀逸である。下記は一番好きな部分。

マリヤが、たとい夫の子でない子を生んでも、マリヤに輝く誇りがあったら、それは聖母子になるのでございます。

あのかず子が、家の没落と肉親の死、上原との恋の成就を通して成長した様がよくわかるのである。

本の紹介では「四人四様の滅びの姿」と書かれている。たしかに、かず子の母はお金が無くなってから気も弱り、病で亡くなってしまうし、弟は貴族から民衆への転身を夢見つつもうまくいかずに自殺してしまう。上原も酒に溺れる駄目な男である。かず子は不倫をして子を宿してしまう。
でも、この小説では、それぞれの檻の中でそれぞれが精一杯抗って考えて生きている様が見られるのが素晴らしいし、特に弱くて精神的に幼かった(年齢は29)かず子が徐々に強く逞しくなっていき、最後にはシングルマザーとしてやっていく決意を固めるところがいいのだと思う。
彼女らの一生を通して、「自分も頑張らなければ」「人生ってなんて面白い」と思える。
美紗ちゃん、里子ちゃん、スタンプの彼女の手を本が渡って来たように、人の数だけ苦しみと希望があって、出会いもあるのだ。

影が濃いからこそ、光が強く浮かび上がるはっきりとした世界「斜陽」
まさにタイトル通りの小説なのである。

応援のクリックおねがいします

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2007年6月 | トップページ | 2007年8月 »