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2007/04/02

海の仙人

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「海の仙人」
★★★★☆
絲山秋子
芸術選奨文部科学大臣新人賞

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宝くじに当たった河野は、会社を辞めて海が美しい福井のまち、敦賀に引っ越す。
古い造りの平屋の一室に海岸の砂を敷き詰め、ひっそりと暮らす河野。
そんな河野の前に、ある日役立たずの神様「ファンタジ−」が現れる。
そして、河野は運命の女性かりんと出会い、その一方で河野に想いを寄せる元同僚の片桐が訪ねて来る・・・といった話。

「ファンタジ−」は孤独な者と語り合うことしかできない、出来損ないの神。
不思議な事に誰もが「ファンタジ−」のことを知っているという存在。
初めて会った時に、「もしかしてファンタジー?」と、ファンタジーであることがわかってしまうのだ。
ただ、作中に登場する人物の中で片桐だけは知らなかった。
作中で、何故片桐だけ知らなかったのかは明かされない。

「孤独は心の輪郭」
「背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物」

と片桐は言う。
孤独という感情に形を与え、一生付き合っていくことを覚悟している片桐。
これは私の憶測であるけれど、片桐はファンタジー同様孤独の正体を熟知していて、外部に救いを求めていないからファンタジーのことを知る必要がなく、だから知らなかったのではないだろうか。

全体的に、淡々とした小説。
各登場人物が背負っている問題、例えばトラウマや病なども描かれているけれど、どれも深く切り込んでいないのでさらさらっと流れていってしまう。
でも、この小説はそんな薄い透明感のある雰囲気で良いのだと思う。
誰だって色々な事を抱えている、孤独である。
時には予想外のトラブルがあって打ちひしがれることもある。
でも、いつか必ず希望の光を見つける。
それの繰り返し。

小説の冒頭で、敦賀の海の描写がある。

波打ち際の明るい碧の海は、一枚の布のように端の方から順々に立ち上がり、ゆるいカーブの壁を作って足にぶつかると、諦めたように白く砕けて引き返した。

この小説の印象は、海である。
寄せては返す澄んだ海水、日に照らされさらさらと流れ落ちる白い砂。
優しく吹く潮風。
そんな感じ。
いつの間にか海に抱かれてぼんやりと佇みたくなる。

海って気持ちいいですよね

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