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2007/04/03

夜のピクニック

410123417501_aa240_sclzzzzzzz_「夜のピクニック」
★★★★★
恩田陸
第2回本屋大賞
第26回吉川英治文学新人賞

書籍の詳細情報はこちら
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北高に代々伝わる、一年に一度の行事「歩行祭」。
修学旅行の代わりともいえるこの行事は、全校生徒が朝の八時から翌朝の八時まで歩く。
前半はクラス歩行で、仮眠時間を挟み、後半は自由歩行。
自由歩行は仲の良い者同士で語らいながら思い出作りをする時間でもある。

ある密かな「賭け」をして3年最期の「歩行祭」に臨んだ貴子は友人と歩きながらも賭けのことが気になってしまう。
訳あって貴子を避ける融は、親友の忍に貴子を好きなのだと誤解されている。
彼女らが参加する「歩行祭」で起こる出来事たち・・・といった話。

みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。

杏奈が呟いたその言葉の通りの小説。
ただただ、みんな歩く。
はじめは遠足気分で浮かれていた生徒たちも、歩いているうちに「歩行祭」の辛さを思い出し、不平不満を思いながらも歩き続ける。なかなか近づかない休憩所にいつかは辿り着くとわかっていても、向かっている途中ではくじけそうにもなる。
歩いているうちに、朝のこと昼のこと夕方のことと、「歩行祭」中に体験したことはどんどん遠い過去になっていく感覚を味わう。辛くて早く終わって欲しいという気持ちと、この行事がもう少しで終わってしまう何もしていないのにという焦燥感とが入り交じる。

たった一晩の話なのに、小説内での時間の流れ方は丁寧で緩やかな為、非常に長い時間が経ったような気持ちになる。「歩行祭」中の時間の感じ方は実際こんなものなのかもしれない。

景色に見とれて歩き、友人と談笑して、身体が悲鳴をあげ、疲労から黙り、一人で黙々と考えて、ちょっとしたハプニングがあって、また友人と談笑して・・・その繰り返し。

私はこの「歩行祭」を経験したことがないのだけれど、登場人物と一緒に景色を見、歩き、疲労している気分になった。おそらく、自然と自分の過去の経験に重ねているのだ。
日常にある無数のこと、乗り越えて来た大小様々な山々たちを。

「歩行祭」の終わりには、登場人物と一緒に達成感を得られて非常に清々しい読後感。
でも、同時に終わってしまったことへの一抹の寂しさも漂う。

大人が書いた青春小説だからこそ、もう青春時代を過ぎてしまった世代にリアルに迫って来るのだと思う。
現役の高校生、もしくはそれに近い世代では、これだけ広く響くものは書けないと思う。

「夜のピクニック」ってとても素敵なタイトルだと思う。
普段昼間やっているようなことを夜にやるのってわくわくしますもんね。

昼間やるようなことを夜にやってわくわくした経験ありますか?

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夜は人の心に魔法をかける。ふだん言えないことが言えてしまう。自分の秘密を人に話したくなる。 あんまり好みのタイプではない男性なのに、夜の車の中だと、ちょっとイイ男に見えたり。(すみません。若気の至りです) ... [続きを読む]

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