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2007/02/19

市川崑物語/岩井俊二

「市川崑物語」
公式サイト
岩井俊二監督
★★★★★

Pic002_main

昨年、出来たばかりの映画館新宿ガーデンシネマで観た作品。
はじめ入り口におばちゃんたちが大行列で焦ったのですが・・・
どうやらおばちゃんたちは「王の男」に群がっていたようです・・・。

・・・すごいね、韓国映画のおばちゃん人気。
マスコミの捏造じゃなくて本当なのね。
そういえば、友達の母親が、知り合いのおばさんに「5枚セットの韓国映画のDVD買ったんだけど、何枚かいらない?」と持ちかけられたらしい。
そのおばさんは冬のソナタだかなんだか、欲しいDVDだけでよかったのについセットで買ってしまったのだとか。

・・・丁重にお断りしたそうです。

話がそれました。
これは、岩井俊二監督が敬愛する市川崑監督のこれまでの歩みを綴った、ドキュメンタリー映画。


歳の差なんて関係ない
この世で一番
話の合う人に出会ってしまった。

市川監督の幼少期から話ははじまる。
当時は当然家庭用のビデオなんかないわけで、写真を使ってエピソードを紹介していくのだけれど、写真の背景と人物を分離して動かす事で立体感や動きをださせている撮り方が面白い。
レトロな写真が生きているようで、新しい。
結構あの作業は大変で、直前まで編集していたそう。

また、ナレーションは一切はいらず、字幕テロップで語られる。
黒い背景に白抜き文字でどーんとはいるテロップには独特のインパクトがあり、映画でありながら小説のように観客の想像力を羽ばたかせ、ある意味映像を観るよりも鮮やかな印象を脳に植え付ける。
また、私は「リリイ・シュシュのすべて」で、掲示板で書かれた文字をそのまま画面に挿入した場面を思い出した。
でも両者は同じ字幕であっても同じ性質のものではない。
リリイの字幕が燻る感情の波をぎゅっと画面内に閉じ込めた熟々とした形のない呟きであれば、市川崑物語の字幕テロップはかっちりと形をもった真っ直ぐな物体である。

ただのドキュメンタリーではなく、岩井監督独自のユーモアを交えながら描かれるので、ついくすりと笑ってしまう。

市川監督は、戦争中二度の徴兵検査をすり抜けてしまったらしい。
二度目なんて、病院で検査してこいと言われて、検査して戻ってきたら、もう徴兵検査の会場はなくなっていたとか。そういうエピソードを語るにも、まるで漫画のように起承転結がきちっとしていて最後にうまくオチがついている。

市川監督は、ディズニーの「ファンタジア」に大きく影響を受けたらしい。
この作品のコンセプトは『音楽と映像の融合』で、クラシック曲とディズニーのアニメを合体させている。また、ステレオが利用された最初の映画でもある。
初めて観た時の衝撃は絶大で、
「こんな映画をつくっている国に戦争で勝てるわけがないじゃないか!!」
と悟ったとか。
たしかに、当時市川監督たちがつくっていたアニメと、「ファンタジア」の差は歴然。
色の鮮やかさ、生き生きと動く登場人物たち。
映画中で紹介されているのを観て、ディズニーキャラクターがそんなに好きじゃない私でもつい観たくなってしまった。そういえば、初期のディズニー映画って名作が多いらしいですよね。

アニメーターを経て、やがて市川監督は、「花ひらく」で監督デビューをする。
アニメーターの道を行かず、映画監督を選んだのは成功だったのでしょう。

1001510_01_1市川監督を語るうえで欠かせないのが、妻であり脚本家でもある「和田夏十」である。
この2人の恋物語や仕事の様子も語られる。
夏十さんが書いた脚本を、夫である市川監督が映画にするという、公私ともにおける最良のパートナー。
市川監督の映画によくある、「お坊ちゃんでどこか頼りないお人好しの男」と「ちゃきちゃきとした女性」というキャラクターは2人の性格ととても近いのだとか。
夏十さんは、心が美しそうな人である。
1001510_03いわゆる「おばさん」になってからの写真も、柔和な笑顔に何ともいえない魅力がある人である。
この映画を思い出すとき、夏十さんの印象が一番強い。
まるで、市川監督の女神のようである。
病に侵されても、取り乱す事なく毅然とした態度の夏十さんは本当にかっこいい。
彼女には、人間誰しもが弱った時に見せる「幼稚」な部分が全くなかったように見える。

市川監督は、光と影の魔術師であるという。
照明のあて方、撮り方など、岩井監督も多大なる影響を受けたらしい。
岩井監督は、市川監督本人と会って話した時に、マニアックな照明の話など他の人とはできない話が沢山できて「この世で一番 話の合う人に出会ってしまった。」と思ったらしい。
でも、あとで考えてみれば話が合うのは当たり前だったという。
何故なら、岩井監督はずっと市川監督を参考に、目標にして、映画を撮ってきたのだから。

自分が衝撃を受け、憧れ、目標にしてきた人と話ができること。
そして、その話が「対等」になれるほど追いつけたこと。
その人のドキュメンタリー映画を撮れること。
こんなに幸せなことってないだろうなと思う。
2人が会う場面では、私も感動してしまった。
映画界における、2つの大きな才能の融合。

映画では、市川監督の作品がたくさん紹介される。
美しい女優たち、当時の斬新な映像手法・・・。
市川監督の作品を、実は私は全く観た事がない。
タイトルを知っているものは勿論あるのだけれど、観る機会なくそのまま・・・といったかんじである。
でも、今回この映画を観て、是非観てみたいと思った。
『市川崑物語』は『犬神家の一族』公開記念で作成する事になったものだそうで、まんまとその術中にはまったというかんじですが、大好きな岩井監督の米櫃につまっている作品たちを私も吸収したいと思う。

岩井監督のフィルターを通して語られる「市川崑物語」
いわゆる「ドキュメンタリー」とは違って新しい形の映画だと思う。

この日、映画の後に岩井監督の舞台挨拶があった。
小さな映画館だったので、すぐ目の前に岩井監督!
10年前から好きな監督だけれど、実物を見るのは初めて。
嬉しく、貴重な体験。

彼がつくる豊かな映画は、私の創造意欲をいつもかきたてる。

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» mini review 07080「市川崑物語」★★★★★★★★☆☆ [サーカスな日々]
『スワロウテイル』『花とアリス』などの岩井俊二監督が名匠・市川崑監督の半生を描いたドキュメンタリー。市川監督が自身の同名作品をリメイクした『犬神家の一族』の公開を記念して製作された本作は、市川監督から多大なる影響を受けたという岩井監督ならではの視点で、市川監督の幼少期から現在までの半生をつづる。貴重な発掘映像も多く披露され、映画監督が映画監督の半生に肉迫した、異色のドキュメンタリー映画としても見逃せない。[もっと詳しく] 大丈夫。愛すべき市川崑監督が、まだメガホンをとってくれている! 実に30年... [続きを読む]

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