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2006/11/24

でかい月だな

でかい月だな
水森サトリ
第19回小説すばる新人賞受賞作
抄録のため評価なし

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大きな満月が見える夜、山中で友人綾瀬に蹴り落とされて、大怪我をおった中学生の主人公。
怪我のせいで二度と大好きなスポーツを出来なくなった主人公を心配し、綾瀬を罵る周囲。
でも主人公は姿を消した綾瀬を庇う。

「ぼくと綾瀬は友達だったんだ。少なくとも、あのでかい月を二人で見たときまでは。」

このフレーズ、どこかできいたことがあるなぁと思った。
映画「ゆれる」だ。
(※感想はこちら
「あの橋を渡るまでは、兄弟でした。」というキャッチコピーに期待して映画を観たところ、本当にいい映画だった。オダギリジョーかっこいいし。応募の時期とかもあるから、決して真似ではないのだろうけど、どうしても「ゆれる」を思い出させる。

主人公はあまり癖のないキャラなのだけど、その主人公の周囲になかなかいいキャラがいる。
旧理科準備室にこもり、あやしげな実験をしている大人びた中学生中川。
眼帯を決して外さないクラスメートの少女、かごめ。
その二人は周囲の顔色をうかがわず、独自の世界の中で生き、一人であることを嘆いたりはしない。

主人公は繰り返しみるある夢が気になってしかたがない。
何者かが周囲の人の身体をどんどん乗っ取り、仲間にしていってしまう。仲間になると、虚ろな瞳でみな同じようになってしまう。その仲間になってしまうと、仲間同士は争わないので一見平和だ。だが、主人公はその何者かの仲間になることを怯え、逃げ回っているという夢。

ある日、主人公は周囲がみな善人になっていることに気付く。
猫嫌いで野良猫を殺したいと思っていた母親が仔猫の里親探しをし、かごめを避けていた女子がかごめと仲良くしようとし、姉が急にボランティア活動をはじめ・・・。
今までよりも平和になったかに思えた世界、でも主人公はそんな世界に嘘くささを感じて仕方がない。周囲はまるで夢のなかの何者かの仲間になってしまったかのようだ。

嘘くさい平和臭を持たない中川に救いを見ながら、主人公は事故以来実は平和な世界が大嫌いで周囲を全て破壊したいくらいの呪わしい気持ちを持っていて、それをずっとひた隠しにしていた自分自身に気付くといった話。
抄録なので掲載してあるのはそこまでで、後は簡単なあらすじが掲載してあった。
気になる人は単行本を買えということでしょうか(笑

差別とか平和とか、そういった哲学的な大きなテーマに挑んだ作品のように思う。
平和をみな望むけど、その気持ちって本当なのか?
その理想を現実にする為には、平べったくて似たり寄ったりの人たちにしないといけないのではないか?
そういった疑問を投げかけているように思う。

この小説は、前述した二人のキャラによってうまく生かされている気がする。
いい小説の条件は、いいキャラなんだよなぁとつくづく思う。
わざとらしくなくて、何かの真似ではない「いいキャラ」ってなかなかつくるのが難しいでしょうね。
大きなテーマに挑んだことと、いいキャラがいるということが受賞の要因でしょうか。

続きを読んでみたいけど、買ってまで読みたいかといわれると「うーん」ってかんじでもあり・・・。
それは、選考委員のコメントやあらすじを読んで、この小説が言わんとしていることが見えてしまったせいですかね。
全文掲載してくれればいいのになぁ・・・。

amazonでの評価は悪くないようなので、気になる方はこちらから。

小説と全然関係ないのだけど、最近時計のゾロ目をよく見る。
常に時間を意識しているわけではなく、「ふと見るとゾロ目」というのが本当に多い。
そういうのは勘が冴えている時だとか言いますね。
だから何をするってわけでもないのですけどね・・・。

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コメント

抄録って、何枚の作品なんでしょうね? あげくにあらすじなどを紹介しちゃったら、買って読む気が削がれるし・・・。それも「小説すばる」ってことは、エンターテインメントでしょ? 文章力勝負というより、物語勝負でしょうから、なおのことあらすじしっちゃったら読む気が・・・。不思議なことをしますねぇ・・・。400枚くらいまでは一挙掲載できるはずですが・・・。それほどの作品ではないってふうにも思えちゃいます。

投稿: Lydwine | 2006/11/25 02:51

447枚らしいです。
選考委員にも長過ぎる事を指摘していた人がいたので、全文掲載するとコストに見合わないということなんですかね〜。やっぱり、おっしゃる通り掲載するほどではないってことですかね。
全文掲載だと思って買って、抄録って書いてある事に気付かず読み進んでいたのでかなり拍子抜けでした・・・。

投稿: *yuka* | 2006/11/25 23:02

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