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2006/11/21

いやしい鳥

いやしい鳥
藤野可織
第103回文學界新人賞受賞作

奇数章は平凡な主婦、内田百合の視点で語られる地に足がついた物語(三人称)、偶数章はちょっと癖があって協調性があまりなさそうな非常勤講師高木の独り語り(一人称)によって進む寓話的な物語。

内田百合は、おかしな行動をする隣人の高木が気になって仕方がない。
夫と平凡なやり取りをし、お隣さんちょっと怖いわぁという感じでゆったりとしていて、百合自体はあまり印象に残らない。多分、高木との差別化をはかる為にあえてこういう感じにしているのでしょうね。

一方高木の方は、息もつかせぬといった感じで、ぶわーっと喋り捲る。
高木の家に酔って転がり込んで来た「トリウチ」は、常識外れの憎たらしい奴で、彼は高木の愛鳥を食べてしまう。愛鳥の呪いなのか、次第に鳥に姿を変えていく「トリウチ」と高木は戦うはめになる。
このトリウチが、ほんと鳥になっちゃっても同情できないくらい図々しくて困った奴で、つまりきちんとキャラが出来上がっている。その筆力はすごい。

結末では、高木が誰に向かって語っていたのかわかるのだけど、それに意外性とか全くない。むしろ「あんた誰?」って感じだし・・・。山本文緒さんの「群青の夜の羽毛布」では、冒頭で「先生、こんばんは。・・・」と言う謎の人物の独白があり、誰が誰に語っているのかという結末がわかった時に「おお、なるほど」と思った。読者を驚かせるような要素がないのであれば、語り相手は「読者」であってもよかったのではと思う。

この小説は、プロットをきちんとつくり込んで書いたのだろうなと思われる。
文章力もちゃんとある。
でも、私にはあまり面白くなかった。
好みの問題なのかもしれないけれど、トリウチが鳥を食べちゃって、鳥になっちゃって、高木とトリウチが戦って・・・それで?という感じ。せっかくの濃いキャラトリウチも、鳥になっちゃったらただのお化け鳥だし、何かが物足りない。トリウチが鳥になった後、それに対抗するように高木がもっともっと狂っていっちゃったら面白かったのかも。椎名誠の「真実の焼うどん」の人くらいに。

ストーリーには関係ないのだけど、藤野可織さんって何か本上まなみさんに似ていません?
ああ、そういえば「群青の夜の羽毛布」の主演は本上まなみさんだったなぁ。(もっと関係ない・・・)

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コメント

はじめまして・・・。
えっと、私も「いやしい鳥」について記事を書いたのですが(http://lydwine.cocolog-wbs.com/blog/2006/11/post_de69.html)、その際、やはり鳥がもの足りないと思っていたのです。そしたら、こちらで、「せっかくの濃いキャラトリウチも、鳥になっちゃったらただのお化け鳥だし、何かが物足りない」という文章に出会って、ああ、そうだったのか! と眼から鱗です。そう! 鳥より、トリウチのほうが面白いじゃん、てことだったんですね。納得しました。

投稿: Lydwine | 2006/11/21 21:38

Lydwineさん、はじめまして。
おお、私の書評がちょっぴりお役にたてたようで嬉しいです。
そうなんですよね、トリウチ>お化け鳥だから、物語が尻すぼみって感じなのですよね。
ブログ、見に行かせていただきます〜。

投稿: *yuka* | 2006/11/21 22:56

私のブログにもご来訪の上、コメントを寄せていただきありがとうございました。
これから、ちょくちょくこちらを拝見させていただきます。

投稿: Lydwine | 2006/11/21 23:31

ありがとうございます〜!
私もちょこちょこ訪問させていただきますね。

投稿: *yuka* | 2006/11/24 00:07

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