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2006/10/06

センセイの鞄

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センセイの鞄
川上 弘美
文藝春秋
★★★★★

いい意味で輪郭のない小説だった。

輪郭がくっきりとした小説は、わかりやすい。
でも、輪郭で描くと、あらすじは説明しやすくとも、読後に残るものがない。
旨味がない。 ストーリーばかりが進んでしまった印象になる。

輪郭は曖昧でも、空気とか雰囲気とかを丁寧に描いてある小説はどこまでも深い。
場面場面をぼんやりと塗り、紡ぎあわせた小説、それが「センセイの鞄」
どういう形かと問われると説明ができないけれど、どこを切り取っても味があり、絵になる。
小説全体を柔らかいものが覆っているので、読んでいるとほかほかとした気分になる。
言葉のひとつひとつが、「いい日本語」である。

主人公は酒飲みで、一人でふらっと飲み屋さんに行ける人で
そういう主人公が私は好きだ。
一人じゃ外でご飯食べられない〜とか、一人だと何をしていいかわからない〜といったタイプの人種とは真反対にいる人。私も主人公側の人間。

「先生」というと、夏目漱石の「こころ」を思い出す。そこから派生して悲劇的な話を想像してしまうけれど、この「センセイ」はどこまでもゆるゆるとおだやかでマイペース。
ただ、主人公が「ああ、この人にはかなわないな」と思って憧憬する様子はかぶる。

芥川賞をとった「蛇を踏む」より、「センセイの鞄」のほうが個人的には好き。

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